キムタツコラム①沖縄の高校生に無料で英語を教えている理由

 

 その頃、昭和薬科大学附属高校や興南高校といった沖縄の高校から講演の依頼を受け始めていた僕は、沖縄の教育事情が他県のそれとは大きくことなることをウチナーンチュの先生方から聞かされていた。沖縄には進学校がないこと。沖縄には塾が乱立していること。全国学力テストの成績が著しく低いこと。しかし、だからと言って僕になにかできるわけではないので、講演に招いてくださった学校の先生方には簡単なアドバイスを送ってはいたが、逆に言えばそれしかできず、もどかしさを感じ始めていた頃だった。

 再度書く。前川君の言葉が心のど真ん中に突き刺さった。

 僕は2015年に「NPOおきなわ学びのネットワーク」を立ち上げ、興南高校の我喜屋優先生に理事長をお願いし、宮城歩先生に事務局長をお願いして快諾を得た。僕は年に数回の無料勉強会を開催するようになり、県内の学校から呼んでいただけるようになった。首里高校、那覇高校、名護高校、西原高校、普天間高校、那覇西高校、北谷高校、浦添高校、読谷高校、北中城高校、知念高校、八重山高校、那覇国際高校、開邦高校…子どもたちに学びの大切さを、そして理由を話してまわるようになった。コロナが始まるまでは。

 阪神淡路大震災がなければ、そして東日本大震災がなければ、前川君は福島に移住をしていなかっただろう。上述の前川君との会話はすべて無かったこととなり、したがって僕が沖縄で活動することもなかっただろう。これからこのご縁がどのように進化し、深化していくのか、僕自身にもわからない。しかし、確実に言えるのは、灘校で勤めていた頃とは段違いに時間ができた僕が、今までの人生で一番長い時間を沖縄で過ごすであろうということであり、その中で素敵な経験を素敵な人たちとできればいいなと思っている。

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木村 達哉

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作家、関西学院大学フェロー、新潟産業大学客員教授、NPOおきなわ学びのネットワーク理事。オリジン・コーポレーション所属。2021年3月まで灘中学校・高等学校教諭。奈良県出身。沖縄で愛犬さくらと一緒に年の3分の1ほどを過ごし、県内の学校や教育機関で英語授業や講演を行う。
趣味はゴルフ。そのわりに90を切ることができずに苦しんでいる。

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