沖縄県の接種率が全国最下位 不満高まる市町村
- 2021/7/22
- 新型コロナ・医療
新型コロナウイルスワクチンの供給をめぐって、沖縄県と県内の複数の市との間でつばぜり合いが表面化している。県が那覇市若狭に設置した県内3力所目の大規模接種会場に、那覇市が使用しているファイザー製ワクチンを回すことになったためだ。政府から自治体へのワクチン供給の減速するなかで、今後は那覇だけに手厚くワクチンが振り分けられることになるのではないか─。他市の首長らは不信感を強めている。
遅れる那覇市の在庫を流用
「現在、全国的にファイザー製ワクチンが不足し、ほとんどの自治体で接種計画の大幅な見直しが行われている。そんな中、不足しているファイザー製ワクチンを使用しての県広域接種会場運営には疑問が残る」
「特定の地域に著しく接種者が偏在することが予想される現在の第3広域接種会場設置計画の財源とその根拠について説明を求める」
7月19日、浦添市の松本哲治市長や石垣市の中山義隆市長らが県庁を訪れ、謝花喜一郎副知事に県内8市長連名の要望書を提出。上記のように、県内3か所目の大規模接種(広域接種)会場に那覇市のワクチンを流用するに至った経緯などの説明を求めた。要望書に名を連ねたのは、県内11市のうち那覇市と豊見城市、糸満市を除く8市で、立場の保革を問わない首長が含まれている。
事ここに至るまでの経緯はこうだ。
沖縄県が沖縄コンベンションセンター(宜野湾市)と県立武道館(那覇市)に次いで、那覇市若狭のクルーズ船ターミナルに3か所目の大規模(広域)接種会場を設置すると表明したのは6月17日のこと。沖縄タイムスや琉球新報によると、設置に至る背景には下地幹郎衆院議員の働き掛けもあったという。使用するワクチンには、国が都道府県の大規模接種向けに供給しているモデルナ製が想定されていた。
しかし政府は同月23日、モデルナ製の供給について新規の申請受付を一時停止すると表明。河野太郎ワクチン担当相は県に対し、ワクチン接種が進んでいない那覇市に沖縄県の3か所目の会場に配分することについても「いかがなものか」と難色を示したという。
はしごを外された県は、市町村向け接種で使われているファイザー製ワクチンに目をつける。ファイザー製の余剰分を回せないか、沖縄市や宜野湾市など複数の市に打診するも、色よい返事は得られなかった。ある市の関係者は「市町村向けのワクチンの供給も先細りしていくことが見込まれているなかで、余っているものなどあろうはずがない」と不満を口にする。
結局、那覇市のファイザー製を流用することで、県の3箇所目の会場でのワクチン接種の当座をしのぐことで話がまとまった。那覇市のワクチン対応は出だしから遅れ、市民たる筆者の自宅には7月20日時点で接種券は届いていない。接種券がなければ全県民が対象の県の大規模接種会場の予約もできず、多くの市民がワクチンを打ちたくても打てずにいる。那覇市の在庫を回すことで接種率の改善につなげるという意味で、県と那覇市の思惑は一致していたのだろう。
19日に松本市長らが県庁に押し掛けたのは、この間の経緯を知らされていなかったためだ。那覇のワクチンが余っているなら不足に困る他市町村に融通すべきではないのか、県の接種会場が那覇市に複数置かれ、沖縄本島北部や南部の住民への利便性がよくない。那覇だけが手厚い優遇を受けるのか─。
さまざまな不満に対し、謝花副知事は「県からの説明が十分でなかったことについてはお詫び申し上げる」と謝罪し、3力所目の会場では那覇市外を含むエッセンシャルワーカーを対象とすることで全県的な接種率の向上につなげると力説した。
接種率は全国最下位に
政府のホームページによると、ワクチン接種において都道府県は市町村間の調整役となり、円滑な接種のため必要な協力を行うこととされている。7月22日午前の時点で、沖縄県で2回のワクチン接種を終えた全世代の割合は13.79%と、全国最下位の水準で(https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard)、最も進んでいる山形県(26.90%)とは実に約2倍の開きがある。
県内の市町村別の接種状況は以下の表の通りである。
県内では人口規模が大きい11市の接種率が比較的低い。その中にあって、石垣市の接種率の高さは際立つ。沖縄県は流行第5波に入り、感染者数がリバウンドして拡大に転じたが、石垣市の感染は落ち着きを見せており、医療関係者からは中山市長主導でワクチン接種が進んだ効果だとの評価がある。市側に不満が募るなかで、沖縄県は調整役としての役割を担えているのだろうか。