多言語求人サイト「オキナビGLOBAL」外国人雇用への想いと現状
- 2020/6/26
- 経済
旅行会社の株式会社ジャンボツアーズは昨年2019年12月、動画求人サイト「オキナビ」を運営する株式会社プロアライアンスと業務提携を結び、外国人向けに特化した多言語求人サイト「オキナビGLOBAL」の立ち上げを発表した。
「オキナビGLOBAL」は、ある外国人雇用の課題解決のために立ち上げられたサイトだが、立ち上げ発表から数か月後、世界中が新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われてしまった。今後「オキナビGLOBAL」、もとい外国人雇用はどうなるのだろうか。
ジャンボツアーズ総務経理部 課長・宮城俊彦氏に「オキナビGLOBAL」立ち上げにあたる外国人雇用への想いと、新型コロナウイルスによる外国人雇用の現状をうかがった。
立ち上げのきっかけは外国人雇用の課題
まずは立ち上げ経緯から伝えたい。現在ジャンボツアーズは、社会貢献活動の一環としてカンボジアに小中高それぞれの学校を5校設立し、運営している。旅行業がメインである同社は、“ジャンボツアーズだからこそできるツアー”として、カンボジアで日本語を学ぶ子ども達と交流できるツアーを定期的に開催するなど、独自で交流の場を設けていた。
現地に足を運び、交流を重ねるうちに「カンボジア人の将来を手伝える事業をやりたい」という気持ちが宮城氏の中に芽生えたそうだ。
また、沖縄は新型コロナウイルス感染拡大前は常時、深刻な人材不足に見舞われているという現状があった。そこで日本に就労したいカンボジア人と、人材が慢性的に不足する沖縄の架け橋になれないかと考えたところから人材ビジネス、もとい「オキナビGLOBAL」の構想は始まったのだ。
構想を叶えるため、宮城氏は情報収集として現地の送り出し機関を尋ねることにした。実際に現地へ行って目の当たりにしたのは、求人活動というよりはただ単純に求人情報が印刷された用紙が壁にペタペタと貼られているだけ。それを見た宮城氏は「人の手が足りない日本企業に対し、選択の余地なくカンボジア人が充てられている」という感覚が拭えなかったという。
そして実際に、宮城氏はカンボジア人にヒアリングを行った。結果としてミスマッチは起こっていた。行った後に「思っていた仕事と違う」とガッカリすることがあっただけでなく、例えば沖縄に就労する人が「日本に行ったら富士山に上りたい」と話すなど、立地面をよく理解しないまま日本へ渡航している現状もあった。
つまり「どんな土地で、どんな仕事をするか」のイメージがないまま日本へ渡航していたというわけだ。もし自分だったらと考えるととても不安なのだが、カンボジアではそれが当たり前だった。
オキナビとの業務提携で感じた可能性
調査をすればするほど「日本で仕事をする」という言葉で一括りになっている外国人雇用の在り方に、宮城氏は強い憤りを感じた。そして人材ビジネスをやるならば、旅行会社として”どんな土地か”をしっかり情報発信することはできるが、”どんな仕事か”を分かりやすく伝えることは、自社では完結できないという結論に至った。そこでピンと来たのが「オキナビ」だった。
宮城氏はオキナビに声をかけた理由をこう話す。「動画は文章と写真の数百倍の情報量があると言われています。動画というだけでなく、オキナビさんは動画求人数沖縄一という実績もありますし、なによりオキナビさんの動画は企業のビジョンや代表者の意見よりも、現場で働く人にフォーカスしていて、僕が思い描いている理想形にピッタリなんじゃないかと思いました」
このマッチングにより、オキナビは動画を、ジャンボツアーズは外国人就労後の生活サポートや紹介等を提供し合う形で「戦略的パートナーシップ契約」が成立した。
コロナ禍で外国人渡航がストップに
現在オキナビGLOBAL は、オキナビが作成した企業動画を外国人用にカスタマイズしたものを配信している。また内定後、長くて10ヶ月程度の待ち時間が発生するのだが、その間にメッセージのやりとりができる仕組みをつくり、渡航前の不安解消やコミュニケーションに繋げている。
リリースまでとんとん拍子で進んだ「オキナビGLOBAL」だが、ローンチしたのは4月末。つまり新型コロナウイルス感染拡大真っ只中だった。あまりにも世界を巻き込む事態なだけに、ローンチ自体を取りやめにする話も出たのではないかと思ったが、やめる選択肢は考えていないという。今後少子高齢化が進む日本において、平均年齢が24歳であるミャンマー・カンボジアからの外国人雇用には需要があると予測し、今後の拡大も考えられると話した。
現状を伺うと、現時点でオキナビGLOBAL を通じて内定済みかつビザの申請も下りているにも関わらず、日本に渡航できない人材が9名ほどいるそうだ。入国制限が解除され、会社側からもOKが出ればすぐに雇用できる状態ではあるが、それがいつになるかも分かっていない。
宮城氏「機会を待ちながらも、企業に対しカンボジアに住む人々が何を食べ、どんな暮らしをしているのか、どういう想いで日本に訪れるのかなど情報発信をしたり、コミュニケーション部分で就労前に少しでもギャップを減らしていければと思っています」
今はただ待つしかない現状ではあるが、宮城氏は「外国人雇用にまつわる人材ビジネスは真の国際交流」だと信じている。
そして現在同社では、主要事業の一つであったインバウンド事業でも様々な工夫を施している。現在はインバウンド客が戻ってきたときのための商品造成やオンライン化(これまでは代理店がメインだった)、多言語化などを進めている最中だ。
今後はオンライン会議などを活用しつつ、これまで出張にかけていたコストを削減していきたい方針を見せた。今後のインバウンド客の動向については、団体から個人旅行へシフトするのではないかと見立てている。バスに乗って3密となるのではなく、個人で距離を保ちながらも感染リスクの少ない状態で楽しめるツアーなどを造成していければと話し、今後はバーチャルでの観光体験も視野に入れていきたいと話した。いずれにせよ、外国人雇用及びインバウンド旅行客の集客、どちらも継続していく意思を伝えた。
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今後、国をまたいでの旅行も外国人雇用の在り方も、どんどん変化していくだろう。新型コロナウイルス感染は世界中に広まってしまったため、インバウンド観光に関しては年内は難しいと同社では見立てているそうだ。訪れる人も出る人も、自身や家族の健康を考慮するとそれが適切なのかもしれない。
だが、悪いことばかりではなかったようだ。国をまたいでのやりとりが多い同社であるが、新型コロナウイルス感染拡大により、オンラインでの会議資料共有が浸透し、コミュニケーションの取り方がかなり柔軟になったと話す。
今後はオンラインで完結できることとできないことが、より明確になるのではないだろうか。ただやはり、実際に目で見て感じて欲しい日本及び沖縄の魅力はたくさんある。今はただ、日本が好きで訪れたいと思う外国人観光客や外国人労働者も、そして受け入れる沖縄の企業や県民も、どちらも安心して迎えることができる日が一日でも早く来てほしいと願う。
◎オキナビGLOBAL
◎ジャンボツアーズ公式HP