「ゲームが大好きで作りたい!」という情熱が今求められている 「ちゅらっぷす」代表取締役社長・中山法夫さん インタビュー
- 2023/11/27
- エンタメ・スポーツ
誰もがスマートフォンを持っている今、ゲームは手軽で身近な存在になっている。もちろん、従来のようなテレビやPCを使う家庭用ゲームの市場も世界規模で活気を見せており、ひと口に「ゲーム」と言っても、そのあり方や展開は多種多様だ。eスポーツという言葉も定着し始めた昨今、ゲームを作っている人たちはゲーム業界をどう見て、どんな人材を求めているのか?
「めちゃくちゃゲーム大好きで、作りたい!という人が今業界に入ると、凄く重宝されると思います」と話すのは、沖縄に籍を置くゲーム会社「ちゅらっぷす」代表取締役社長の中山法夫さん。30年近くゲーム業界に関わってきた中で今感じていることや、ゲームを仕事にすること、そして沖縄とeスポーツの可能性などについて、たっぷりと聞いた。
人を楽しませるためには「自分が楽しんでなんぼ」
――「ちゅらっぷす」はどんな会社ですか。
「今年9期目で、社員が45名ほどいるゲーム会社です。大元は朝日放送で、その中のDLEグループの一員としてのゲーム事業を担っています。主にアニメや映画のIP(知的財産)を活用したゲームを作って配信・運営していて、主なタイトルは『おそ松さん』『キングダム』『ポプテピピック』などがあります。最新作は『モンスターストライク』の続編を今年リリースして運営中です。
社員はコロナ前までは全員沖縄にいて机並べてたんですけど、現在はフルリモートになっています。大阪、広島、東京など全国で仕事をしていて、沖縄だけという感じではなくなってますね。あと、バイクに乗って日本を1周してる社員もいたり(笑)」
――めちゃくちゃ自由ですね(笑)
「もちろん仕事はちゃんとやってくれてますよ。そんなゲーム会社です(笑)。ゲームは人を楽しませるものだし、それを作る仕事なので、自分らが楽しんでなんぼですから。そういうスタンスです」
――中山さんはどんな経緯でゲームの仕事に就いたんでしょうか。
「22歳の時にゲーム業界に入ったんですけど、当時まだゲーム会社って今みたいに大卒が必須ではなかったんです。今は基本新卒採用ですけど。最初にスポーツゲームが有名な大手メーカーに入ったんですけど、そのきっかけも『お前おもろいから来い』みたいな、そんな感じでした(笑)。元々専門学校でオンラインとかホームページ作成について独学で勉強してて、自分でホームページ作ったりとかしてたんですよ。97年ぐらいで、画像1枚をダウンロードするのに1日かかってた時代です(笑)」
――元々ゲームが好きで「ゲームを仕事にしよう」という気持ちがあったというわけではないんですね。
「もちろんゲームは好きで、ファミコンとかMSXとか色んなゲームで遊んではいました。家が厳しくてゲーム機を買ってもらえるわけでもなかったので、友だちの家で遊ぶという感じで。『ゲームを作ってる人がいるんだ』ぐらいの認識だったんですけど、エンターテイメントの業界は面白そうだし、入ってみようかと。
それで当時、携帯電話が出始めたり、PCが普及しだした中で、野球ゲームをモバイル化したり、家庭用ゲーム機をオンラインに繋げるようにしたりと、色んなゲームをオンライン化・モバイル化するプロデューサーという形で15年くらいやってました。
その後は独立して会社を作ったり、売ったり、色んな会社に役員として呼ばれたり、っていうのを2017年までしてて、その年の4月に沖縄に移住したんです」
――ちなみに沖縄に移住した理由は。
「サーファーなので。島でサーフィンをしたいっていう思いがあったんです」
そもそも「業界が無かった」沖縄
――非常にシンプルな理由ですね(笑)。仕事をする中で、やりがいを感じたり楽しい瞬間はどんな時ですか。
「僕はゲームを作ったり、プランニングするような役割ではなくて、それをできる人を集めて、お金を持ってきたり、アニメの版元さんを引っ張ってきたり、という“組み立てる側”の人間なんですよ。でも、そうやって集めた人たちが作ったゲームが世に出て、お客さんが喜んでる反応が見られるのは非常に嬉しいし、やって良かったな、って思いますね。最近はそれがデータで分かるんですよ。ダウンロード数や課金率、継続率で目に見えますから」
――沖縄での人材登用は大変でしたか。
「沖縄での採用は、来たばっかりの頃は苦労しました。そもそも業界が無かったので、経験者がいないんですよ。もともと僕が来た時は、ちゅらっぷすは10人くらいの部署のような位置付けの会社で、人件費も開発費も安く受けられます、っていう感じだった。でもそれだとヒットは生み出せない。そこをどう引き上げていくかということが大きな課題でした。
いわゆる大人向けのメディアに文章を書いてる人を採用してみたら、人の欲望や欲求をバナーで上手いこと伝えてくれた、ということはありました。あとは、接客が得意な人を採用して、外部の会社とのやり取りがスムーズに進んだりとか。沖縄でそういう発見は凄くありました。これまではどこの会社で何年キャリアがあって、どんなゲームを作ったかというところで評価していたので」
――チーム作りをしてるような感じでしょうか。
「そうそう。色んなことに向いている人っていっぱいいて。例えば以前は編集者もついていた元漫画家の社員がいるんですけど、ゲームにマッチするデザインもめちゃめちゃ上手いんですよ。あとは、ヒット漫画のゲームを作る時に原作者さんとやりとりしながら監修作業をするんですが、元漫画家は原作者さんの気持ちが凄く分かるので、話がスムーズに進む。その点で言えば、うちの会社はおそらく、日本で見ても原作者からの理解を得る「監修力」みたいなものはめちゃめちゃ強いと思っています」
――昨今はスマホを始め、デバイスもコンテンツも多種多様になってると思うんですが、今後のゲームの展開にはどのような可能性があると考えてますか。
「マーケットはずっと成長し続けてるとデータでは出てるんです。ただ、その中でも海外の存在が大きくて、メジャーなゲームの7割は海外の売り上げ。日本市場だけで言うと下がってないようで実は下がっているのが現状です。日本は円安もあるので、海外で売れてるメーカーが勝っている。特にスマホは最もグローバルに展開しやすいですからね。そこのシェアをどう獲得していくのかが業界としての次テーマだと思います。
その点で言うと、沖縄はアジアが近いですし、これから凄く伸びていくであろうインド、中国、フィリピン、インドネシアとかも視野に入れることができる。中国なんかは交流もあったりするんで、沖縄の会社としてはそこに大きなチャンスがあると感じています」