沖縄では、コロナ禍の収束とともに、観光業を中心として経済が回復しているが、人手不足なども指摘されている。中小企業の支援などに取り組んでいる独立行政法人・中小企業基盤整備機構沖縄事務所の越智稔之所長に、県内での景況感や課題を聞いた。
―県内中小企業の景況感と課題は
7~9月の景況感は、前期(4~6月)に比べると足踏み感が出ているが、景況感が「良い」と答えた企業の方が、「悪い」とした企業より多く、沖縄は全国に比べて景況感は良い状況だ。
課題は、人手不足と原材料費の高騰だが、現状では人手不足が課題として非常に大きい。観光客などの需要が回復しても、対応できなくなっている。
―人手不足への対応はどうすべきでしょうか
人手不足の内容を、分解して考えた方が良いと考えてる。純粋に働き手が足りない部分と、ITやウェブ戦略の構築など比較的高度なスキルが必要な人材が不足している部分は、対応が異なる。
また、人手不足感を解消するには、業務の効率化で対応できる面もある。業務の見直しというと、すぐにITやDXという発想になりがちだが、まずは仕事の流れを見直し、ITやDXに置き換える部分と、そうでない部分を丁寧に分けることが非常に重要だ。
中小機構としては、そこが一番大事だと考えており、その支援に力を入れている、
―そのほかに、課題はありますか
通常のプロセスで実施する仕事と、顧客に頼まれて行う特注品のような仕事が雑然と混在してしまうと、商品ごとの原価管理ができなくなり、価格交渉力が弱くなる。
業務プロセスを「見える化」することで、仕事のあり方が整理でき、業務・在庫も適切になる。顧客に対して積極的に提案して、付加価値を高めていくことも可能になる。
それだけでなく、人員を適切に配置し、例えば在庫管理だけをしていた人が、営業や購買の手伝いをする「多能工化」などもできるようになっていく。そうやって利益が出れば、従業員に対しても還元していけるようになるのではないか。
「創業率の高さ」は沖縄の強み
―県内企業の「強み」は何だとお考えですか
沖縄は創業率が高く、新しいことを抵抗なくぱっとできる人が多いと思う。これは、日本全国でほかにない特長だ。
業務プロセスの改善などは、「学べる」ものだが、「創業」のような話は学ぶことができない。創業率が高いことは、沖縄が誇るべき能力と言える。
簡単にうまくいくとは限らないが、創業の能力と学ぶことで可能になる施策との組み合わせに挑戦することでの「伸びしろ」は大きい。
―県内企業でよく言われる後継者不足については、どうお考えですか
自分たちの仕事の価値や魅力は何かを考え、発信していくことが大事だ。「働きがい」と言ったときに、給料や待遇はもちろんあるが、「自分たちの仕事が何に関わっていて、どのように地域へ貢献しているか」を大切にする人も増えている。
仕事の魅力に気づくことで、経営者の親族からだけでなく、従業員の人からも「継いで頑張ろう」と思う人が出てくるとも考えられる。
―魅力に気づくことは、業務の改善にもつながりますか
金融機関と連携して企業を支援する場合、財務面は金融機関が評価し、われわれは非財務の部分を担当する。財務面以外に、どういった魅力があるのかを発見していくことで、事業に対する共通認識を持つことができる。
小さな成功体験から積み重ねていくことで、現場が変わり、現場が変われば人、人が変われば「当たり前」が変わる。地道ではあるが、課題の解決に繋がっていくと思う。
県内と全国のバイヤーつなぐ商談会も開催
―商談会も開催なさっています
県内の事業者と、県内外の企業をマッチングする取り組みを行っている。県などが実施する、大きな商談会に行けるようにというステップの側面もある。
事業者が、自社の製品について魅力を考える機会にもなっている。
―企業の皆さんに呼び掛けたいことは
沖縄は、支援機関同士のネットワークが非常にうまくいっている。支援の施策は多くある。自分たちで抱え込まずに、相談してほしい。