沖縄の無人島・屋那覇島、中国系企業が土地取得で渦中に リゾート計画も
- 2023/2/17
- 社会
沖縄本島北部に近い離島、伊是名村にある無人島の屋那覇島がにわかに注目を集めている。発端は今年1月、中国人女性が自身のSNSに島に上陸する動画付きで「私が買った」と投稿し、中国や日本のメディアで取り上げられたことだ。実際、登記簿上でこの女性の関係会社と見られる東京の中国ビジネスコンサルティング会社が2021年2月から島の一部を所有していることが確認されている。
この会社は島の5割程度を取得したと見られ、ホームページ上で「現在リゾート開発計画を進めております」と公表。それを受け、インターネット上では「中国領土が拡張した」など領土問題にまで話が広がっており、混沌とした状況となっている。一方、急に渦中に放り込まれた形の伊是名村にはリゾート開発計画についての説明は無く、困惑している状況だ。
釣り場、キャンプ地として人気
屋那覇島は三日月状の形をしており、周囲5.3kmの平坦な島。約1,300人が住む伊是名島の南1.3kmに位置し、漁船を使えば10分ほどで行くことができる。伊是名島は沖縄本島北部の今帰仁村にある運天港からフェリーで約1時間の場所にある。
沖縄総合事務局の観光ポータルサイトによると、島には先史時代から人の営みがあり、土器や貝塚が発掘され、古井戸や貯水池の跡も残っている。戦前は家屋の石材として利用されていた琉球石灰岩の石切場が設けられていた。拝所も多いという。海の透明度は極めて高く、現在は釣りスポットとして人気が高い。コロナ禍の前までは、毎年夏休みに伊是名島を含めた全国の子どもたちが長期でサマーキャンプを張る企画が開かれていた。
10年以上、毎年このサマーキャンプに参加していたという沖縄本島在住の30代女性によると、島にはキャンプで使用するための水道が伊是名島から海底を通って引かれているが、電気はない。伊是名島の住民にとっては極めて身近な島だといい、「伊是名の人がカヌーで来て釣りをしたり、普通に遊んだりしていました。私も今でも島の人たちと交流があります」と話す。
譲渡額3億5千万円 養殖場計画は反対で頓挫
島の土地は900以上の所有権に分かれており、個人所有や村所有などが混在している。伊是名村によると、村所有は東側の砂浜部分を中心に全体の約26%。今回、中国ビジネスコンサルティング会社が取得した土地は、村所有以外の部分だ。
同社が2021年に取得する前に土地を所有していた会社は、20年ほど前にクルマエビの養殖場を計画。当時の村長は当初、雇用効果を見込んで計画を推進する立場だったが、環境への影響を憂慮する村民も多く、最終的には頓挫した。関係者によると、中国ビジネスコンサルティング会社への譲渡額は3億5千万円という。