沖縄の景気「持ち直し」維持 日銀金融経済概況12月
- 2022/12/10
- 経済
日本銀行那覇支店(飯島浩太支店長)は9日、2022年12月の県内金融経済概況(主要指数10月)を発表し、観光客や県民の外出機会の増加傾向が続いていることを踏まえ、県内景気は「持ち直している」との判断を3カ月連続で維持した。個別項目の判断もすべて据え置いた。飯島支店長は「全体として観光需要の回復が続いている」との見解を示した。
個別項目の判断では、個人消費で「緩やかに増加している」、観光では「持ち直している」、雇用・所得は「改善の動きが続いている」、先行きを「持ち直しが続くとみられる」などとし、すべての項目で判断を据え置いた。
個人消費は、10月の百貨店・スーパー販売額(全店舗)が前年比5.8%増加した。物価上昇の影響で、販売額が増加している側面もあるものの、食料品販売の堅調さが継続し、外出機会が増える中で、衣料品や雑貨の販売に引き続いて動きが見られた。
観光は、10月の入域観光客数が前年比で約2.1倍となったほか、主要ホテルの客室稼働率が67.4%と、19年対比でマイナス幅が縮小した。また、11月の客室稼働率は速報値で71.5%となり、コロナ禍以降で初めて7割を超える水準を示した。
雇用・所得では有効求人倍率が1.09倍で、4カ月連続して1倍を超えた。9月の現金給与総額は前年比0.2%増加した。
一方で、消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年比3.8%上昇し、5月(同2.5%上昇)から上げ幅の拡大が続いている。
先行きについては「感染抑制と経済活動の両立が進んでいく下で、観光消費などの需要の回復が続くとみている」と述べた。
来年度以降の物価動向に注目
飯島支店長は、物価上昇の伸び率が高まっていることについて、消費に対してマイナスの影響を及ぼす可能性を指摘した上で「2年近く我慢していた消費(ペントアップ需要)が顕在化している。物価高という向かい風はあるが、消費の堅調さが続いている」と分析した。
コロナ禍の2年間で消費が抑制されたことなどで積み上がった個人預金が、現在の消費を下支えしていることにも触れた。
ただ、ペントアップ需要が減衰した後について「電気代を含めた物価上昇以上に賃金が上がり、実質賃金がプラスにならないと消費が腰折れしてしまう」と指摘し、賃金がしっかり上昇するかどうかが今後のポイントになるとした。
また、物価上昇について、これまでデフレが長期間にわたり続き、企業側がコスト上昇を販売価格に転嫁しない傾向が強かったが、現在は価格設定に対してこれまでになく積極的になっているとして、飯島支店長は「緩やかに物価も賃金も上昇していくことがベストだと考えている」と述べた。
一方で、行き過ぎるとアメリカや欧州のように物価と賃金の上昇スパイラルになるリスクもあるとしたほか、逆に物価も賃金も上がらないという方向に戻る可能性もあるとして「上下両方向のリスクはある」ことにも言及した。その上で「来年度以降の物価については、非常に注目して見ていく必要がある」と強調した。
来年度以降について、春闘での賃上げ交渉(ベースアップ)がどのような形で決着するかが、賃金にも物価にも影響してくるとして、重要ポイントの一つに挙げた。また、仮に資源価格高騰が一服した後に、各企業の価格改定や賃金へのスタンスがどうなるかについても、しっかり見極める必要があるとの認識を示した。
(記事・写真・図 宮古毎日新聞)