沖縄の人口、近年中に自然減へ転化か コロナ禍で「出生数減が加速」 りゅうぎん総研調査
- 2022/6/20
- 経済
琉球銀行系シンクタンクの「りゅうぎん総研」(伊東和美社長)が、調査レポート「沖縄県の人口・世帯の動向」をまとめた。沖縄はこれまで全国で唯一、人口の自然増が続いている都道府県だったが、コロナ禍による入国規制で外国人が減り、さらに婚姻件数や妊娠届出数が減少。自然増減について「近年中に減少に転じることが見込まれていたが、足元で出生数の減少がさらに加速することが予想される」とし、自然減となる時期が早まる可能性を指摘している。
有配偶者の出産が減少
出生数と死亡数の差を示す「自然増減」について、沖縄は本土復帰した1972年以降、増加を続けてきた。第2次ベビーブームの最中にあった72年は15,822人で、74年には18,334人とピークを迎える。80年代は15,000人前後で推移し、90年代以降は死亡者数の増加に伴い減少傾向を続けた。直近の2021年は953人となり、1972年に比べて6%程度まで低下した。
女性の人口(15~49歳)に出生率を乗じた数値となる出生数については、沖縄は2016年頃から減少傾向がみられる。結婚している女性の割合を示す「有配偶率」は近年緩やかながら上昇し、2020年は48.0%。一方で、結婚している女性が出産する「有配偶出生率」は近年低下しており、20年は11.1%となった。
20年は国内で新型コロナウイルスの感染拡大が顕著となった年でもあるため、「20年にかけての有配偶出生率の低下は新型コロナウイルスが影響している可能性もある」とした。
その上で、「今後は婚姻を促す若年層への雇用対策と経済支援が必要であり、若い世代のキャリア形成支援などを促進する必要がある」と経済力や生活を支える施策の実施を提言した。
生産年齢人口も減 人手不足への対応提案
毎年増加を続けてきた沖縄の総人口においても、今年の2022年2月以降は3カ月連続で前年同月を下回った。日本人の増加率を外国人の減少率が上回ったことを要因に挙げ、「新型コロナウイルスによる入国規制が影響している」と分析する。
一方、地域別では本島北部や離島で既に人口が減少している自治体は多い。日本の安全保障や排他的経済水域などの面から有人離島が果たす役割の大きさを指摘した上で「今後、離島の自然を満喫しながらのワーケーションの推進やオンライン医療、オンライン教育の導入などに取り組めば、家族連れの移住者の増加や離島における人手不足の解消なども期待できる」とした。
レポートでは15~64歳の生産年齢人口が2011年をピークに減少を続け、さらに2012年から65歳以上の老年人口が15歳未満の年少人口を上回っていることも紹介。それらを踏まえ、「深刻化している人手不足への対応や専門分野の人材育成が課題であり、近年増加している外国人の受け入れ態勢の環境整備も検討する必要がある」と提言した。