繭はなぜ星形? 沖縄こどもの国などで新種ハチ発見 「ホシガタハラボソコマユバチ」

 
新種として認められたホシガタハラボソコマユバチ(沖縄市立郷土博物館提供)

 沖縄市立郷土博物館に、沖縄こどもの国などで見付かった新種のハチが展示されている。同博物館と大阪市立自然史博物館、神戸大学、九州大学の共同研究チームによって確認され、その名も「ホシガタハラボソコマユバチ」。体長3~4ミリほどの小さなハチだ。成長の過程で、複数の幼虫が糸を出して直径約1センチの星形繭を作り、枝や葉にぶら下がる。多い場合には100を超える幼虫が協働し、吊り下げる糸は1メートルに達することもある。

 2021年10月に「亜熱帯日本の星:吊り下げられた奇妙な星型の集合繭を形成するMeteorus属の新種多寄生蜂(ハチ目、コマユバチ科、ハラボソコマユバチ亜科)」というタイトルで国際的な専門誌に論文を発表し、新種として認められた。

自作のボードを指差しながら新種ハチの生態を解説する刀禰浩一学芸員=沖縄市立郷土博物館

 なんとも奇妙な生態は、どんなことを意味しているのか。発見者の1人である同博物館の刀禰(とね)浩一学芸員に発見の経緯や生態の特徴を聞いてみた。

ボランティア調査隊の活動が発端

 新種確認の発端は、郷土博物館とこどもの国が2017年からこどもの国周辺で行っている「沖縄こどもの国いきもの調査隊」。両者の職員が市民ボランティアと共に植物や昆虫を調査する活動だ。

 2019年5月、今年新しく完成したワニエリア近くを散策している時だった。「これ、何だろう?」。子どもの1人に尋ねられた刀禰さん。目を向けると、金平糖のような星形の物体がシマグワの木にぶら下がっていた。

枝葉にぶら下がっている星形の繭(沖縄市立郷土博物館提供)

 「最初はクモの卵嚢かと思った」と言うが、博物館に持ち帰ってよく観察すると、糸がより合わさって形作られていた。さらに一粒一粒に何かが入っていて、生き物の繭だということも判明。保管していると、寄生蜂の一種であるコマユバチという小さなハチが孵化してきた。

 実は刀禰さん、繭を見た時に「記憶の検索がかかり始めていた」という。「誰かがブログでネットに上げていたな…」。ツイッターで検索をかけると、案の定、大阪市立自然史博物館の藤江隼平学芸員が似た形の繭の画像をアップしていた。

複数の幼虫で1つの繭を形成

 コンタクトを取ると、この繭はまだ名前の付いていない種類で藤江さんらのグループが研究中とのこと。サンプルが不足していると言われ、追加で探してみることにした。いざ注意深く街中を見てみると、こどもの国周辺だけに限らず、沖縄市内の各地で次々と星形繭が見つかった。

ホシホウジャクの体から出てくる小さなイモムシ(沖縄市立郷土博物館提供)

 初めの発見から1ヶ月ほどが経った2019年6月、ホシガタハラボソコマユバチの生態の一端が分かるきっかけとなる一本の電話が入る。

 「ホシホウジャクのイモムシから、小さなイモムシがたくさん出てきた!」

 蛾の一種であるホシホウジャクを飼っていたこどもの国の職員からの連絡だった。カメラ片手に、すぐに同園へ向かった刀禰さん。到着すると、ちょうど複数の小さなイモムシが枝葉の上にいる寄主のホシホウジャクの体から抜け出し、糸を垂らして降下するところだった。

糸にぶら下がった多くの幼虫が3カ所に集まっていく(沖縄市立郷土博物館提供)

 観察を続けると、糸を出して枝葉にぶら下がった複数の幼虫が、風にあおられながら回転して糸をより合わせるようにして一カ所に集まっていく。数十分後、3本の糸の束の先に幼虫の塊が出来上がった。変化は終わらない。さらに幼虫一匹一匹が放射状に整列して外側を向き、繭になるための糸を吐き始め、計1時間ほどでこどもの国で発見した星形の繭が完成した。

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