台湾有事で沖縄は 安全保障研究の第一人者がシンポジウム
- 2022/3/10
- 国際
中国と台湾間で武力衝突が起こる「台湾有事」を想定して、日本・沖縄をはじめとした世界の安全保障を考えるシンポジウム「台湾海峡の緊張と日本の安全保障」(主催・一般財団法人平和・安全保障研究所)が3月5日、那覇市のノボテル沖縄那覇で開催された。約70人が参加した。ロシア軍によるウクライナ侵攻の教訓から、国際社会が連携して台湾有事を抑止する重要性などを議論。一方で、もしも台湾有事が発生した際には沖縄など国内各地にも米軍戦力が集結することなどから、登壇者からは「世界の安全保障の最前線に、好むと好まざるにかかわらず、日本が立ってしまった」と、台湾有事がすなわち日本有事であるとの危機感が示された。
ウクライナ侵攻「ソフトパワーだけでは阻止できなかった」
日本の安全保障研究の第一人者が登壇した。登壇したのは法政大学法学部の福田円教授、東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授、河野克俊前統合幕僚長、平和・安全保障研究所の徳地秀士理事長の4人。司会は東京国際大学の村井友秀特命教授が務めた。
平和・安全保障研究所の徳地秀士理事長は、ロシア軍のウクライナ侵攻に触れながら「経済制裁だけで侵略を食い止めることができなかった。明らかになったのは、そのようなソフトパワーでは阻止できず、やはり物理的な実力が必要ということだ」と軍事的抑止力を議論することの重要性を述べた。さらに「そしてどの国も一国だけで自らを守ることはできず、安全は国際社会との連携で確保されるということも言えるだろう」と述べ、同盟関係の在り方も重要視した。
また、実際に台湾有事になった場合には「日本国内も戦場になることは避けられない」と断言。「台湾には米軍の実働部隊がいないため、台湾やその周辺に戦力を集結させる必要がある。沖縄も含めた在日米軍の動きはかなり活動が活発になるだろう」と述べ、南西諸島の住民避難に向けた備えについても提起した。
中国の海洋進出の鍵となる南西諸島
河野前統合幕僚長は「歴史を見ると、経済発展した国は海洋進出をするのは必然だ」と話す。例に挙げたのはかつてのポルトガル、スペイン、イギリス、オランダ、アメリカ、日本という国々。豊富な資源を求めて海洋の権益が不可欠という点からだ。
その点を踏まえて「中国が海洋進出するということ自体を責めるつもりはない」とした上で、中国の海上での国防ラインとされる第一列島線・第二列島線について「本来どこの国のものでもない海洋に勝手に線を引いている」と批判し「第一列島線は、ロシアでいうウクライナと同じように、中国にとってのバッファー(緩衝地)となっている」と述べた。
河野氏は、中国の海洋進出にとって邪魔となる存在として「日本列島、沖縄を含む南西諸島、台湾」の3つを挙げ「中国は『沖縄を占領する』とは言っていなく、そこまで話の飛躍はしていない」との見方を示した。その一方で、海洋進出を進めていきたいという中国の戦略を鑑みると「香港、台湾、尖閣をコントロールして、できるものなら第一列島線を完結させたいという狙いがある」と紐解いた。
また、中国政府は「台湾は中国の一部である」という見方をしていることから「中国共産党にとって台湾併合を『やらない』という選択肢はない。台湾併合こそが中国共産党のアイデンティティでもある。条件が整えば絶対にやる。しかし中国にとって『やれない』ということはある。そのための抑止力を日米で構築することが必要だ」と締めくくった。
「冷戦終結後の世界は本当に終わった」
佐橋准教授はロシアのウクライナ侵攻を受け「冷戦終結後の世界は本当に終わった」と言い切った。「たしかにテロとの戦いや中国の台頭などはあったが、今私たちが見ているのは、本当に国際関係と国際秩序が変わっている瞬間だというように思う」