「台湾有事」意識させた露軍ウクライナ侵攻 石垣市長選の投票結果に影響か
- 2022/3/5
- 政治
陸上自衛隊の配備をめぐる対応などが争点となった2月27日投開票の沖縄県石垣市の市長選挙から1週間が経過し、今回の選挙戦の全容が総括されつつある。
接戦が予想されるなか自民、公明推薦の現職、中山義隆氏(54)が、玉城デニー知事を支える「オール沖縄」が支援する新人(52)を抑えて4回目の当選を果たした。沖縄県政奪還をめざす与党にとって名護、南城に続く市長選3連勝であり、オール沖縄勢力に対する優位を印象づけた。選挙イヤーの沖縄は今後も沖縄市や宜野湾市などで市長選が続くが、緒戦で勢いを得た与党が秋の知事選に向けて大きな弾みをつけたかっこうだ。
その一番の追い風となったのが、露軍のウクライナ侵攻と、これに絡む「台湾有事=日本有事」という島民の危機感だった。
侵攻前夜、緊張の沖縄米軍・自衛隊
「これほど不気味なまでに静かな米軍基地は、なかなかみられないよ」───。
那覇駐在の、先島の郷土紙記者がこうもらしたのは、ロシア軍のウクライナ侵攻直前、2月23日夜のことだった。たしかに筆者が同日昼間にいた嘉手納基地、普天間基地周辺ではついぞ飛行機やヘリの飛行音などは聞かれなかった。
ロシアが、そのEU加盟阻止に執着するウクライナは、極東に置き換えると中国が「不可分の領土」「核心的利益」とする台湾ということになるだろう。侵攻前夜の沖縄本島における米軍基地の静けさは、中露の密接な関係を念頭に、露軍の動きに呼応しての中国軍の東シナ海における動きを警戒し、極東米軍などが牽制に総力をあげているであろうことは想像に難くなかった。
事実、防衛省は3月1日、ウクライナ侵攻があった2月24日に沖縄南東空域で航空自衛隊機が米空軍爆撃機などと共同訓練を実施した、と明らかにした。この編隊航法訓練に、空自側は那覇基地第9航空団のF15戦闘機2機が参加したという。
これに先立つ15日~17日にも日米は同じ空域で戦闘機同士の訓練を実施。また沖縄周辺海域では1月下旬と2月上旬、海自と空母を含む米海軍艦艇と共同戦術訓練を相次いで実施し、不測の事態を念頭に活動を展開していた。
果たして、2月27日正午ごろ、中国のフリゲート艦1隻が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を北から南に横断したと、防衛省は1日までに発表している。
石垣市長選投開票日に中国軍艦、翌日に哨戒機
このフリゲート艦は宮古島北方約350キロを航行した後に太平洋に入ったが、27日が尖閣諸島を市域に持つ石垣島市長選の投開票日であったことを思えば、白昼堂々先島周辺海域を航行する中国艦は、何らかの意趣を含んだものとも解釈できる。
防衛者では、翌28日午前から午後にかけても、中国空軍のY9哨戒機1機がほぼ同様のルートで東シナ海と太平洋上でそれぞれ旋回したことも公表。フリゲート艦は海上自衛隊機が監視にあたり、Y9哨戒機は航空自衛隊機がスクランブル(緊急)発進して対応したという。
侵攻があった24日は、台北駐日経済文化代表処那覇分処(台湾の窓口機関)でも東シナ海周辺の動静に対し、帰任間際の范振国処長らが緊張感をもって事態を注視する姿が見られた。