「台湾有事」意識させた露軍ウクライナ侵攻 石垣市長選の投票結果に影響か

 

沖縄本島でも風向きに変化

 「沖縄では国防、安全保障に関する意識など、本島と先島で全く違う面がある。でも最近は、やや風向きが変わってきた」

 先述の郷土紙記者らはこうも証言する。

 経済的に成長著しい中国の、沖縄周辺での軍事的に活発な動きは、先島ではごく身近に感じられる「眼前の危機」だ。一方、国土面積の約0.6%という同県の多くを占める沖縄本島などに、全国の約7割の在日米軍専用施設・区域が集中しており、先の大戦の地上戦の記憶もあいまって反基地、反軍色が濃厚といえる。

 沖縄では本土の読売、朝日、毎日、産経、日経という「全国紙(本土紙)」を部数、影響力で、本島の沖縄タイムス、琉球新報の県紙2紙が圧倒する。全国紙購読者数は非常に少なく、ほとんど読まれていないにも等しい部数だ。県紙2紙の論調こそ沖縄本島の論調であり、全国紙では比較的朝日、毎日に近い。

 一方、先島には4つの小規模な新聞があり、「郷土紙」として本島の2紙と区別している。郷土紙のなかには全国紙の読売、産経に近い論調が垣間見られるものもあるが、読者は少数、もしくは購読地域が限定的だ。

 とはいえ、米中対立が激化するなか、香港を国家安全維持法で縛り、台湾に対しても「統一」を「必ず果たす」とする習近平指導部の中国の強権的姿勢を前に、日本最西端で、台湾までわずか約110キロという与那国島では、「台湾有事を強く意識した提案も飛び出した」という。

台湾有事想定で「シェルター建設構想」

「地元の自民党系町議が昨年12月の町議会で、台湾有事などに備え、シェルターを建設すべきではないかと提案し、物議をかもしたのです。台湾有事はイコール日本有事だという危機感がここまできたかと、本島でも驚きをもって受け止められました」

 郷土紙記者らが解説してくれた。

 「与那国島では何年かに一度は、海上から『ドドーン』という爆音が聞こえることもあって、不気味に感じる島民も多いと聞きます。それが昨年末にもあったそうです。地下鉄もない島で、台湾有事におびえる島民1700人が、しっかり避難できる施設の建設の是非を議論することは自然な流れかもしれません。ここ2、3年、中国の強権主義的姿勢が浮き彫りになり、なにをするかわからない、という危機感が、次第にこうした動きをする先島から本島にも波及しつつあるようです」

与那国町祖内集落

 この有権者の「安全保障」への意識の高まりは、「オール沖縄」勢力の退潮傾向に拍車をかけると目されており、今秋に知事選を控える玉城知事の再選戦略にも大きな影響が出そうだ。

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吉村 剛史

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新聞記者・編集者。1965年、兵庫県出身。元産経新聞台北支局長、広島総局長、編集委員。2019年末に退職しフリーに。台北特派員時代には日台漁業協議の最前線を取材。後に学術論文『新聞報道から読み解く馬英九政権の対日、両岸政策-日台民間漁協取り決めを中心に』(2016)などにまとめた。近著に『アジア血風録』(MdN新書)。雑誌やウェブに執筆多数。YouTube番組『吉村剛史のアジア新聞録』『話し台湾・行き台湾』(HYPER J CHANNEL)でMC。東海大学海洋学部非常勤講師。

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