自然遺産登録で地元は今 世界で唯一ヤンバルクイナに会える施設
- 2022/1/4
- 社会
2021年7月、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」がユネスコ(国連教育科学文化機関)によって世界自然遺産に登録された。沖縄の固有種を含む生物多様性が“世界の宝”として認められた形だ。
そんな固有種の代表的存在・ヤンバルクイナを保護する「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」の解説員であり、NPO法人やんばる・地域活性サポートセンター理事兼事務局長の小林和彦さんに、世界自然遺産登録を受けた地元の変化や、今後の自然保護、地域活性の在り方などについて聞いた。
2021年を振り返り、2022年の沖縄を見据える年越しインタビュー第5弾。
地元の人々、「何もないよ」から「自然がある」に
やんばる(山原)は、沖縄本島北部の山・森林地帯を指す。
ヤンバルクイナ生態展示学習施設では、ヤンバルクイナの「クー太」が、ガラス越しで来場者にその愛くるしい姿を見せてくれる。ヤンバルクイナが展示されているのはこの施設のみであり、「一般客が会おうと思って会えるヤンバルクイナ」は、クー太が唯一だ。
―昨年の世界自然遺産登録後の変化などはありましたか?
「地元の自然の素晴らしさに誇りを持ち始めた人が増えているように感じます。以前でしたら『何もないよ』で終わっていたところが、今では『何もないのに自然がある』と堂々と言えているようになっていることが大きな変化です。
世界自然遺産登録に関連して地域がさらに盛り上がるように、新しいコンテンツを作り出せないかと取り組んでいました。私がプロデュースした国頭村の公式キャラクター『くーやん』のインスタグラムを1月に立ち上げたり、2月にはやんばるの生き物のネイルアートを展開したりしました。爪の中にやんばるの生き物を飼う感じですよね。女性だけでなく男性にも人気でした。『俺はノグチゲラ飼ってるよ』みたいな(笑) コロナ禍での小さな楽しみですよね。
その中でも、世界自然遺産登録があった7月にはクラウドファンディングに挑戦しました。傷付いたヤンバルクイナの命をつなぐリハビリ施設建設への協力を呼び掛けるものです。約1360万円のご協力を頂きまして、リハビリ施設は生態展示学習施設に隣接する形で、今年の10月ぐらいには完成予定です。ヤンバルクイナに特化するのか、その他の生き物も受け入れるのかも含めて関係者と協議していきたいと思います」
―傷付いたヤンバルクイナは結構いますか?
「世界自然遺産登録で来訪者が増えて、ロードキルが増えることが懸念されますが、昨年はここに来るみなさんも車を減速して来てもらえるようになっています。時速30kmぐらいで走ると、万が一ヤンバルクイナを轢いてしまっても生存確率が高くなります。ただ、このようにしてせっかく生き残ってくれたとしても収容施設が不足しています。ヤンバルクイナはだいたい10年ほど、最長では15年ほど生きます。老人ホームならぬ老鳥ホームのような、保護できる場所が必要です。