「シビックテック」で困りごとを解決 市民と行政コラボの新たな潮流
- 2021/11/11
- 社会
市民がテクノロジーを活用し、行政と連携しながら積極的に社会・地域課題の解決や生活の利便性向上のために取り組む「シビックテック」が注目を集めている。この言葉は市民を意味する「シビック(Civic)」とテクノロジーの「テック(Tech)」を掛け合わせた造語だ。
シビックテックの動きが全国的に活発化していることを受け、那覇市は沖縄県内外の事例に学ぶイベント「となりのシビックテック」を10月にオンラインで開催した。実際にIT技術を利用して地域課題にアプローチした県内のエンジニアや、先進的な取り組みを行なっている静岡県の行政職員らが参加し、テクノロジーの活用方法やシビックテックの可能性について議論を交わした。
オープンデータ活用推進も鍵
司会を務めたまちづくりファシリテーターの石垣綾音さんはシビックテックの目的を「市民が主体的に社会に関わり、あるべき社会について『ともに考え、ともにつくる』人々が増えることで、より良い民主主義社会を生むこと」と説明。また、シビックテックでも活用される「オープンデータ」については「営利・非営利の目的を問わず、機械判読に適した形で無償利用できるもの」と定義付けている。
ここで肝心なのは、きちんと“使える形”でデータを公開していることだという。例えば公文書や数値などをPDFデータで公開しているケースは多いが、この形式だとデータの処理をする際に改めて文書や数値を打ち込む作業が発生してしまうため、かなり非効率的になってしまう。そのため、広く活用されことを想定して互換性が高いExcelやCSVなどのファイル形式で公開することが望まれると説明した。
「地元を良くしたい」が原点
登壇者には、県内からは今年7月に実施された那覇市議会選挙の際にポスター掲示板のマップをオープンデータ化したエンジニアの大田小波さん、非公式南風原町議会アプリを制作した予備校講師の玉城陽平さん、行政と技術者でよりよい地域づくりを目指して活動する「CODE for OKINAWA」のエンジニア・立花豊さんを迎え、県外からは、仮想空間に静岡県を3Dで丸ごと再現するというまるでSFのようなプロジェクト「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル・シズオカ)」の構築を手掛けた、静岡県交通基盤建設政策課未来まちづくり室イノベーション推進班長の杉本直也さんも参加した。
各登壇者はそれぞれの取り組みについて紹介しながら、自身のモチベーションや所感について述べた。
大田さんは371箇所のポスター掲示板の場所をGoogleマップに落とし込んで公開したことで「那覇市議選候補者の各陣営から大きな反響があった」と報告した。「技術的に大したことはしてません。ITの知識がある人同士で協力すれば、地域課題を上手く解決することができると感じています」
「地元南風原を良くしていきたいというのが原点でした」と語った玉城さんは、膨大な情報を整理することでまちづくりに参加するハードルを下げ、「大人も子どもも合わせて“みんなで決める”ために町議会アプリを作成しました」と述べた。ゆくゆくはアプリを他市町村から全国にも広げ「地域の自治と協働のインフラ的な基盤としたい」と展望を描いた。