【教員免許更新制度廃止へ①】なぜ、更新制は失敗してしまったのか?

 
文部科学省
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 このほか、自治体が実施する「10年研」(10年経験者研修)と免許取得10年後に訪れる更新講習の時期が重なり、さらには内容までかなり重複するという非効率さも強い批判を浴びてきましたが、こちらは、10年研を「中堅教諭等資質向上研修」と改称し、経験年数を10年に縛らず受講時期を弾力化するなど改善の努力もありました。しかし、結局多くの批判を乗り越えることはできず、ついに今回、廃止の結論に至ってしまったのです。

中教審が出した結論

 免許更新制の見直しに関する今回の議論は、3月に「諮問」という形で、文科大臣から中教審に対して見直しの検討が要請されたところから始まっています。中教審の下に置かれた「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」で議論されることとなり、「教員免許更新制小委員会」と称して4月以降集中的に検討を重ね、8月23日には「審議まとめ(案)」が示されました。

 そこで、これまでに指摘されてきた問題点と、これからの教員像・教員養成のあるべき姿として「新たな教師の学びの姿」を示したうえで、免許更新制はむしろこうした理念実現の阻害要因であるとして「『新たな教師の学びの姿』の実現に向けて、教員免許更新制を発展的に解消」すべきと結論づけました。すなわち、現行の更新制は廃止して、多様な研修の充実、教員個々の研修歴管理システムや学習分析システム導入による個別最適な研修受講の促進などを進めていくという考え方が示されたのです。

強調される「発展的解消」の意味

 審議まとめ案では、時代の変化が急加速する中、最新の知識技能を学び続ける姿がこれからの教師像であるとしています。個別最適な学びを継続して実践する背中を子供たちに示すことこそ重要だとしました。これからの教員の理想像。これに、免許更新制はもうそぐわない、という流れで制度廃止の議論を整理したわけです。

 免許更新制の目的である教員の資質向上という趣旨は決して間違いではなく、むしろこれからはもっと重要になるから、免許更新制は「廃止」ではなくむしろ「発展的解消」である。

 いかにも「霞が関文学」を象徴するようなこうした表現が強調されるのは、文部科学省自身が免許更新制の挫折に苦しんできた内情と、この悪いイメージを払しょくするのだという省としての意地が表出しているように思えてなりません。

 これまで萩生田文部科学大臣は、免許更新制に関して抜本的に検討すると表現し続けてきましたが、今回「発展的解消」という表現に変わり、制度の廃止、そして新たな仕組み構築に向けて議論が本格化していくフェーズに移りました。8月23日の記者会見で、来年の通常国会で法案提出というスケジュールまで表明したことからも、かなり具体的に準備が進んでいることが伺えます。現行制度の「発展的解消」が一体どのような影響をもたらすのか。今後の動向に注目です。

(つづく)

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