「こども庁」構想に迫る①子供たちを取り巻く危機を打開できるか

 

縦割り行政が生む弊害

 例えば、子供の不登校問題を考えてみましょう。沖縄は特に全国に比べても不登校が多いと言われています。どのような実態があるかというと、心身にハンディキャップ=疾患をもった子供だけでなく、家庭の貧困が大きな原因になっていることが多くあります。では、どのようなアプローチが考えられるでしょうか。

 その子が学校に通うために必要な経済的支援、食事や遊びが安心してできる放課後の居場所づくり、保護者が子供のためにゆとりをもって時間やお金を使ってあげられるような生活支援や勤める企業への支援。他にもいろんな対策が考えられると思いますが、例示した対策だけでも、文部科学省、厚生労働省、内閣府、経済産業省に担当がまたがります。誰を対象に、どのような条件で、どれだけ支援をするのか。お金で支援をするのか、あるいは施設や職員などを配置してサポートする場所を作るのか。それぞれの省庁は自分たちが持っている予算と権限の範囲内で考えを整理していきますので、政策が実際に現場で実行されるころには、不合理な“ズレ”が数多く生じてしまうのです。

 一概に論じることは難しいですが、このようなモデルケースを考えただけでも、このまま様々な組織がバラバラに対応していては、本質的な解決は難しいということが想像できると思います。

一層深刻な虐待問題

 虐待をめぐる問題は、特に深刻に捉えなければなりません。記憶に新しいのは、2018年 3月に目黒区で亡くなった5歳の船戸結愛ちゃんの事件や、2019年1月に千葉県野田市で亡くなった10 歳の栗原心愛ちゃんの事件です。学校(文部科学省)、児童相談所(厚生労働省)、警察(警察庁)がすでに対応していたにもかかわらず、命を救うことができなかったという重大な事件でした。対応が複数の機関にまたがることや転居に伴う対応機関の変更で、どうしても組織どうしの情報伝達が不足してしまい、結局大事なタイミングで対応に穴が開いてしまったといえます。

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