迷走する沖縄県のコロナ対策 玉城知事の求心力にも陰りか

 
20210511_知事ホール会見_宮古毎日新聞社
玉城デニー知事 写真:宮古毎日新聞社提供

知事に説明なし

「報道で先に知った」
 玉城知事は8日夜の記者会見で、宣言延長の決定について事前に政府からの連絡がなかったと明かした。前日の7日には、西村康稔経済再生担当相にまん延防止への移行を電話で要望していたが、その返答は政府関係者から直接もたらされなかったという。政府の決定は、玉城知事にも「寝耳に水」だったことだろう。

 宣言延長に対する経済界の焦りや反発はすさまじく、8日の日中には、県内の観光関連団体「沖縄ツーリズム産業団体協議会」が照屋義実副知事に対し、宣言延長方針の撤回を政府に求めるよう要請。照屋副知事は「玉城知事を通じて要請内容を伝える」と応じたが、この件を含めて、玉城知事が政府の方針決定に異議申し立てをした形跡は見当たらない。知事は8日夜の記者会見で、政府の方針決定について「まだまん延防止等重点措置に移行するには早いのではないかという、総合的な判断をなされたのであろう」と淡々と受け止めを語った。

 ただ、感染状況が落ち着いてきたとはいえ、沖縄県の感染状況は依然として国の警戒レベルで「ステージⅣ」(爆発的感染拡大)の水準にある。純粋な数値に基づくならば宣言延長は妥当な判断ともいえるが、あらかじめ政府と県との間で状況認識をすり合わせることはできなかったのか。今回の事態には、県庁内にも「政府とのコミュニケーションが取れていればこれほどバタバタすることはなかったかもしれない。何となくまん延防止に移行できるという空気ができていって、見立てが甘かった」(幹部)との声がある。

「基地反対」で築いた求心力に陰り

 沖縄県は感染の拡大局面にあった5月、政府にまん延防止から緊急事態宣言への移行を要望したことがある。その際には、まん延防止でも可能な酒類提供の自粛要請を行わないまま宣言適用を求める県の姿勢に、政府内で不信感が広がった。結局はその後も感染が抑え込めず、政府が折れる形で宣言を適用し現在に至っている。

 沖縄県のコロナ対策をめぐっては、県立中部病院(うるま市)で発生したコロナ感染者51人(うち17人死亡)のクラスター発生の事実が公表されていなかった問題も明らかになったばかり。コロナ対応の迷走が続き、玉城知事を支える立場の県政与党の関係者の一人も「報道によると、菅義偉首相が沖縄の失策を挙げ『かばいきれない』と言ったそうだが、こちらだってどうすればかばえるのか…」と呆れた様子を見せた。

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