【沖縄の一斉休校③】オンライン授業は沖縄の教育課題を埋める

 

オンライン授業は「授業」ではないのか

 文部科学省は、令和3年2月19日に発出した通知で、このように説明します。

・「学校教育は教師と児童生徒との関わり合いや児童生徒同士の関わり合い等を通じて行われるもの」
・緊急事態宣言などの非常時においても、「まずは可能な限り感染リスク低減・安全確保をした上で、児童生徒が登校して学習できるようにすることが重要」
・①同時双方向型のオンライン指導②課題の配信・提出、教師との質疑応答・児童生徒同士での意見交換(オンデマンド動画を併用して行う学習指導を含む)を「オンラインを活用した特例の授業」として認める

 「授業」は、実際に登校するのが基本という考え方がわかります。しかし、3つ目の項目で「特例」とされていることから、オンライン授業も「授業」として認められるようにも見えますが、実はこれにはカラクリが隠れています。
 この通知発出と同時に更新された「Q&A」で、「オンラインを活用した特例の授業」は「その学習時間を授業時数に含めて扱うものではありません」と明記されているのです。さらにややこしいのは、万が一規定の授業時数を年間で下回ったとしても「そのことのみをもって学校教育法施行規則に反するものとはされません」としていることです。

 つまり、一律に授業時数が足りないから進級・卒業はできません、とは言わないが、そうならないようにできる限りの努力(=授業時数を補う補講の実施)はせよ、という考え方なのです。オンライン授業を頑張って実施しても、その分さらなる負担が先生にも子供たちにも降りかかってくることになる。これでは、仮に非常時の備えだとしても、現場としては二の足を踏んでしまい、なかなかオンライン授業は浸透しないでしょう。

 先述の松井市長は、夏休みの大幅短縮について、「学ぶ権利をよりしっかり確保していくということだから、これは仕方ない」と述べました。

 ややこしい表現で責任を逃れる策は国の常套手段です。この部分の考え方で、国と大阪市は水面下で激しくせめぎあっていたに違いありません。

沖縄にメリットや優位性の多いオンライン学習

 まんべんなく一斉にオンライン学習を取り入れるには、超えるべきハードルが非常に高いのが現状です。しかし、沖縄での2度にわたる一斉休校は「非常事態だからオンライン学習がうまくできなくても仕方なかった」と割り切るだけでいいのでしょうか。ピンチの今だからこそ、成長の大きなチャンスと捉えるべきではないでしょうか。

 ここで、もう一度原点に立ち返ってみましょう。
 憲法が保障する「学ぶ権利」。コロナ禍の困難の中でも「学ぶ権利」を確保するためにあらゆる努力が払われてきました。そして今回特に注目されたオンライン学習。危機を乗り越えるツールとして、急ピッチで全国的に準備が進められているものの、その潜在能力を十分発揮するまでには至っていません。
 しかし、オンライン学習の意義を思い返してみれば、物理的な距離の制約をなくして世界中とつながることができ、時間の制約をなくして自分の好きなタイミングで(全員一斉ではなく個別の能力・進度に適った)学びを進めることができるという、これから日本が、世界が目指していくべき学びの基盤となるわけです。

 沖縄はご存じの通り島嶼県です。沖縄こそ、オンラインをフル活用してその地理的制約を乗り越え、先進的なコンテンツの展開、特色ある各地域間での交流などに積極的に取り組める土壌があるのではないでしょうか。

オンライン学習で、沖縄は「日本の希望」になれる!

 沖縄の教育課題の一つである不登校の多さ(2020年度における割合が小中高校別でそれぞれ全国2位・8位・1位)にも、オンライン学習の充実は有効です。様々な困難を抱える子供に対して、とにかく早く学校へ復帰することを促すのではなく、ひとつひとつ困難に向き合いながら、個人のペースに合わせて進められるような充実したコンテンツをオンライン学習として用意できれば、時間の制約を乗り越えた大きな武器になるに違いありません。

 他にも、「受ける」授業から「参加する」授業への進化、学ぶ内容を自ら選択・構成していく真のアクティブラーニングの達成など、オンライン学習は多くの可能性を秘めています。

 2度の一斉休校を経験した沖縄こそ、地理的制約あるいは様々な教育課題を抱える沖縄こそ、攻めとしてのオンライン学習に積極的に取り組み、その成果をもって「日本の希望」となるべきではないでしょうか。


■関連記事
【沖縄の一斉休校①】2度目の休校は想定できなかったのか|HUB沖縄
【沖縄の一斉休校②】学校オンライン化が遅れる理由|HUB沖縄

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