2人の県出身美容師 シンガポールで人気店経営、2号店も計画
- 2021/4/3
- 社会
立ちはだかるシンガポールの厳しい就労事情
独立の選択がいかに大きな決断だったかというのはシンガポールの就労事情や経済事情も絡んでくる。
第一に、外国人がシンガポールで働くうえで取得が必要な就労ビザが年々厳しくなっているのだ。シンガポール政府は、EP(専門職向け労働ビザ)最低月額給与が3,900ドル(約31万/月)から4,500ドル(約36万円/月)に引き上げ、シンガポール人の雇用を積極的に行っていない企業に対しての取締りも厳しくなってきている。
二つ目に、家賃の高さ。都心エリアに出店すると賃料は50万円~100万円。それ以上することも珍しくない。Room Hair Salonでいうと、都心エリアにあるお洒落な路地裏の古民家住宅の2階を改装してオープンしたが賃料は約60万円。数名のスタイリストを抱え、賃料と光熱費、商材などの仕入れを考えても固定費が多額になるのは容易に想像がつく。
独立に至るまでに、シンガポールでサロンの店舗展開に従事してきた仲宗根さん。感覚値で「8割開業の準備が整っていても後の2割は運。むしろその2割の運の方が大事かもしれない」と話す。
開店間もなく2カ月営業停止
立地の良い物件との良縁も重なり、独立からサロンオープンまで目まぐるしかった。その時期は旧正月とも重なり幸先の良いスタートだったという。華僑が8割を占めるシンガポールでは旧正月前が一番の稼ぎ時と言っても過言では無い。いわゆる「しょうがちだんぱち」文化が根強くある。
しかし、念願のサロンを開業して2カ月後の昨年4月、シンガポールではサーキッドブレーカー(部分的な都市封鎖)が行われた。2カ月間営業中止という不遇に見舞われたのだ。当時を振り返り2人は口を揃えて「終わった…潰れると思った」と、今となっては笑顔で話す。
日本では特別給付金や中小企業向けの支給などがされたが、シンガポールでも同じような取り組みが行われた。だがそれは「シンガポール人のみが対象」なのである。シンガポール人就労者への給与の支払いは補助があるものの、外国人オーナーに対しての支援は無いに等しい。幸いにして、ビジネスパートナーの1人であるシンガポール人からの融資により2カ月間の都市封鎖期間を乗り越えた。