与党過半数も薄氷の県議選 勢力再編にも影響か

 
沖縄県議会
沖縄県議会

 7日に投開票された沖縄県議選(定数48)は、玉城デニー知事を支援する共産、社民など「オール沖縄」を標榜する県政与党が過半数を維持した。

 下馬評では県政与党が優位に過半数を制するとの見方があちらこちらで聞かれたが、蓋を開けてみると与党の当選者は25人と改選前から議席を減らす薄氷の結果となった。かろうじて過半数は保ったとはいえ与党25、野党・中立23とほぼ伯仲する構図となり、玉城知事にとっては厳しい県政運営も予想される。

過半数も追い風とはならず 自民は4議席増

「予想していたよりも厳しい結果だ」
 7日深夜、県議選の大勢が判明し報道機関の取材に応じた玉城知事は、険しい表情を崩さなかったという。


 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対してきた玉城知事にとって、今や「民意」こそが頼みの綱だ。辺野古の埋め立てをめぐる国との裁判では敗訴が続き、対抗手段には手詰まり感が漂う。自身を支える議員の数が過半数割れすれば、「反対」を訴える基盤が揺らぎ、辺野古関連の裁判を起こす際に必要な議案を通せない公算が大きくなる。玉城知事は選挙戦中、連日「オール沖縄」の候補の応援に駆け付け、支持を訴えた。


 過半数が維持でき県政運営への信任を得た形とはいえ、議席を減らす結果は玉城知事への追い風とまではならなかった。


 一方、県政野党の自民は今回の県議選で公約に「辺野古への移設を容認する」と明記して臨み、改選前から4人増の17議席を確保した。自民の当選者数は2004年の県議選が20人、08年が16人、12年が13人、16年が14人と、辺野古問題をめぐる“逆風”が直撃し議席を減らしてきたが、今回の結果は巻き返しに転じるものとなった。辺野古のスタンスを鮮明に打ち出して議席増につなげたことで、今後県議会で追及を強める構えを見せる。
 菅義偉官房長官は7日深夜、自民県連幹部に電話を入れ「よくやった」と労ったという。

ベテラン落選も オール沖縄に明暗

 玉城知事を支える「オール沖縄」を構成する県政与党は、政党によって明暗が分かれた。


 まず特筆すべきは共産の躍進だろう。共産は前回失った糸満市区で議席を奪還し、出馬した7人全員が当選した。7議席は過去最多で、「オール沖縄」の旗印の下で着実な党勢拡大を印象づけている。


 那覇市・南部離島区で新人の喜友名智子氏(43)が初当選した立憲民主は、県議会で初議席を確保した。これまで沖縄選出の国会議員はおろか、県議会にも議席を持っていなかっただけに大きな一歩と言え、これを機に沖縄での足場固めに力を入れるとみられる。選挙戦中、喜友名氏の応援には前参院議員の糸数慶子氏(72)も駆け付けた。糸数氏をめぐっては、これまで次期衆院選の沖縄4区の擁立候補として名前が取りざたされたこともあり、立憲民主の対応を含めて今後の動向が注目される。


 多くの関係者が驚きをもって受け止めたのが、県政与党の一角を担う社会大衆党(社大)の大城一馬委員長(72)の落選だ。南城市・島尻郡区から7期目に挑んだが、自民新人の石原朝子氏(60)に議席を奪われる形で涙をのんだ。県政与党内には動揺が広がり、ある当選者は「次期議長への呼び声も高く、手堅く勝ち上がってくるものと思っていた。経験豊富なベテランを失ったのは痛手だ」と悔やんだ。


 社民は米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市区で現職が落選し、改選前の5議席から1つ減らした。

引き抜き、離反はあるか

 大方の予想を覆す番狂わせを演じたのは、宜野湾市区で当選し8年ぶりに返り咲いた野党系無所属の元職・呉屋宏氏(61)だったのではないか。選挙関係者の間で出回った政党の世論調査では常に他の3候補に引き離され、厳しい結果が予想されていた。
 今回、呉屋氏には公明が推薦を出した。関係者によれば、公明の支持母体・創価学会の山本武総九州長が呉屋氏と面会し、全面支援を決めたという。選挙戦では公明の県議や宜野湾市議が幾度となく呉屋氏の応援に駆け付けていた。公明市議3人で4500~5000程度の票があり、これが呉屋氏の当選の鍵を握ったとみることもできる。
 その傍ら、呉屋氏は今年2月、当選後は自民会派に所属する旨の覚書を自民県連と交わしている。見込んでいた自民からの推薦が結果的に得られず、陣営内に不満もくすぶったが、呉屋氏は覚書通りに自民会派入りする方向で調整が進められている。陣営関係者は「勝てばノーサイドだ」と話した。呉屋氏の当選と自公への接近は、次期宜野湾市長選や衆院選沖縄2区を展望する上でも新たな変数となりそうだ。


 48人の当選者が決まり、6月下旬に予定される県議会ではまず新たな会派構成や議長の選任に関心が集まる。与野党構成が改選前より拮抗したことで、与党多数とはいえ引き抜き工作や造反の動きがあれば、野党や中立会派がキャスティング・ボートを握る展開は十分ありうる。


 県政与党の無所属議員でつくる「会派おきなわ」の動向も焦点で、選挙戦前には玉城知事と距離を置こうとする議員も複数いた。無投票となった浦添市区で5選を果たした赤嶺昇氏(53)もその一人。赤嶺氏はかつて県議会で下地幹郎衆院議員(58)に連なる中立会派に身を置いていたこともあり、下地氏が既に接触を始めたとの噂も漏れ伝わっている。


 与党議員が一人でも寝返った場合、県議会のパワーバランスが一気に崩れることになりかねない。水面下で繰り広げられる駆け引きに目が離せない。


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