航海民族を繋ぐ音楽プロジェクト  映画『大海原のソングライン』

 

音楽で映し出す、古代航海民族の目で見る世界

 2019年頃、私は映画作品『大海原のソングライン』の母体になる「Small Island Big Song」というプロジェクトを知った。このプロジェクトでオーストラリアの音楽プロデューサーのティム・コール監督と台湾人冒険家のバオバオ・チェンさんは、3年間かけて太平洋・インド洋の16ヵ国の島々を渡り、東はイースター島、西はマダガスカルまで、各国の民族音楽を記録した。

 これは国境を超えた合唱・アンサンブルが音楽の共通点を示し、言語を超え祖先の繋がりを証明したいという大きな理念を持つ音楽プロジェクトだ。映像作品以外にも、既に世界中で多くの音楽賞を獲得した同名アルバムをリリースし、さらに2018年から始まったコンサートツアーなどを通して、今まで教科書でしか見たことがなかった「南島語族」の存在を、音楽的なアプローチで繋ぎ、みんなが経験できるものへと昇華した。

 私はこの生き生きとしたプロジェクトに興味を惹かれた。まず、古代の航海民族の視野で改めて世界を見るという世界観は十分に独特だと思う。監督夫婦二人の力で完成したジャンルを超えたプロジェクトは、映画に関してはホームメイドな部分があるにせよ、確実に一つの「海の地図」を見た者に提示している。現代の国々とその国境の概念を忘れ、海と島の視点に戻り、この作品が古代の祖先たちが見た星空と大海原の地図を見せたのだ。

 2019年の沖縄国際映画祭に招待された監督夫婦は、その後、私が関わっている石垣島ゆがふ国際映画祭のイベントへ招待して再度来沖した。マダガスカルのアーティストで出演者でもあるサミーさんとのライブも行った。

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