「軍港移設はもはや争点ならず」松本氏陣営 浦添市長選

 

組織力の差が勝利に結びついた

 コロナ禍での選挙戦となり、両陣営とも不慣れな状況が続いた。特に現職である松本氏は、コロナ対策、東京ヤクルトスワローズの春季キャンプ受け入れ、12月議会対応など市長としての公務が重なり、序盤は公務とのバランスに苦慮する場面が続いた。

 それでもやはり大きく差が開いたのは、企業や各種団体からの組織的な支援がものを言ったからである。そのひとつが日本商工会議所の政治連盟である日本商工連盟浦添地区の推薦を得たことだ。前回2017年の市長選では相手候補を推していたが、今回は松本氏の側に付いた。伊礼氏が2期8年の市議時代に日本共産党に所属していたことから、選対関係者は「共産党系候補は(団体の性格上)推せないでしょう」と見る。出向社員やボランティアの人員も余裕が出始め、活動に弾みが付いた。

 企業や各種団体の推薦は前回選挙よりも多いという約70団体を取り付け、市政全般の実績を評価する声を積み上げていった。「前回選挙では『所属団体が応援を明言していないため、個人では協力しづらい』という人もいて、こそこそと協力する人も多くいましたが、団体の推薦があると堂々と後援会事務所に出入りできるため、活性化しました」(松本陣営幹部)

 特に県医師連盟や県看護連盟など、医療系団体の推薦を多く受けたことが、新型コロナ対策への評価に説得力を持たせた。昨年5月には、浦添市医師会によるPCR検査センター県内初設置を市としてバックアップしたことや、他の市町村に先駆けて自粛体制の解除指針を示した市独自の出口戦略「うらそえリハビリ計画」を発表したことなどが、市民の支持を強めていった。

当落の行方を神妙な面持ちで待つ松本哲治氏=7日、浦添市内

SNS動画や政策内容で若者層にも訴求

 今回の浦添市長選挙は、両陣営ともSNS動画や配布印刷物などの「クリエイティブ」を活用した戦いが目立った選挙でもあった。特にSNS動画で訴求するという方法は、平均年齢が若い浦添市民にとって各候補者の主張を理解するのに一役買ったと言える。

 コロナ禍で積極的な集票活動ができない場合、一般的には実績や知名度で勝る現職が有利だとされているが、松本氏陣営よりも伊礼氏陣営がツイッターのリツイート数などで大きく上回る反応を得ており、どんどん追い上げられているような印象を受けていたという。

 後援会関係者は「もともと(伊礼氏が所属し離党した)共産党はそういったSNSを使った情報発信に長けていました。われわれもどんどん見習おうと積極的に打って出ました」と語る。

 選挙戦を通して松本氏が多用したフレーズがあった。「ワクワク」だ。「浦添の未来にワクワクしている」「浦添にはワクワクするポテンシャルがたくさんある」。そのような「明るく楽しい未来志向」を印象付け、デジタルシティ構想や、教育にITを積極導入する「ギガスクール」を公約に盛り込むなどで、若年層も含めて幅広い年齢層を取り込めたことも勝利の要因となったと言えそうだ。

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