守れ超ローカルの味たち 糸満に集う「島豆腐フェスタ」企画者・金城さん

 

「生活の中に当たり前に豆腐がありすぎて、意識したことがあまりなかったのですが『この地域にはいつも買っていた豆腐がない』『この豆腐は初めて見る』など、知らないことの多さに気付きました」

 島豆腐を作っているお店などは、日持ちのしない日配品を扱う特性上、地域に根差した小規模のものがほとんどだ。そのため、市町村単位ではなく、その下位区分である字単位が商圏であり、さらにはその地域のみに愛される豆腐が存在することとなる。そんな「ここでしか味わえない超ローカルフード」について調べてみようとした金城さんは、あることに直面することとなる。「ほとんど情報がなかったんです」。

 各地域でしか知られていない豆腐店が多く、一元的に情報がまとまった資料が見つからなかった。約90社・店舗が加盟する業界団体「沖縄県豆腐油揚商工組合」はあるが、加盟していない店舗も多くあることも分かってきた。「豆腐チャンプルーなどこんなに身近で愛されている食品なのに、なんでこんなに情報がないんだろうと思いました」と振り返る。

 島豆腐のガイドブックを作りたいと見据えるが「(手掛かりの少なさで)どツボにはまってしまって。『そりゃあ、今までガイドブックも作られてこなかっただろうな』と納得しました」と語る。

仕事と並行して島豆腐フェスタの開催に向けて大忙しの金城さん=15日、糸満市内

地元に愛される小さなお店たち

 金城さんの気持ちに追い打ちをかけたのが、昨年6月に食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」が義務化されたことだ。菌の増殖を抑える観点から、製品温度が55度を下回ってから3時間以内に消費するか、速やかに冷却し冷蔵で保存することが定められた。「これまでよりも島豆腐があちこーこー(あつあつ)のままで提供しにくくなると、小さい店舗が存続できなくなるのではないかとの危機感もありました」

 フェスタ開催に向けて糸満市内の豆腐店を探し当てたり巡ったりしている時も、路地にある小さなお店には地元の人が足を運び、注文や問い合わせの電話が鳴っていた。地元に密着している文化であることを肌で感じると共に、(車で2時間弱かかる)名護市から買い求める人がいるなど「好きな人は遠くからでもこだわって来る」との驚きもあった。

 また、総務省沖縄総合事務局の調査によると県内の島豆腐の消費量は減少傾向にあり「島豆腐の魅力を再発信したい」との原動力につなげる。

島豆腐カード計画

 プロジェクトの柱には、県内各地の豆腐店を紹介するトレーディングカード「島豆腐カード」の計画もある。島豆腐を購入したおまけやイベント会場などでもらえ、カードには店名、パッケージ写真の他に詳細情報を知れるQRコードをプリントする予定だ。遠く離れた地域の、これまで知る機会のなかった豆腐店を、カードを通して知ることができると考えた。

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