「単年度の黒字化がそれほど後ろ倒しになる要素はない」下地島空港会社・伴野賢太郎社長インタビュー
- 2021/1/13
- 経済
空港ビジネスを街づくりにつなげる
――そうした状況の中、伴野社長の出身母体である三菱地所は、下地島を含む宮古島で空港ビジネスをどう進めますか?
伴野 もともと三菱地所は面的な不動産の取り組みが得意だ。東京でも駅前からというのがひとつ。それと似た発想で考えると、空港から人の往来がスタートすると。空港+不動産で事業を進めるという大きな方針が出ている。同時に空港民営化もスタートすることを踏まえて、高松空港、静岡空港、北海道7空港のコンセッションを取りに行った。
下地島は沖縄県の利活用事業で種類がまったく違うが、ポリシーは一緒だ。空港のことだけを考えるのではなく、どうやって人の交流を促進させるかということ。そのために何が必要かを考える。空港×何かがセット。宮古島の場合は、その「何か」がビジネスや歴史、文化ではなく、リゾートということだ。では、リゾートを体現するために何ができるかと言えば、オフィスでも住宅でもなく、まずはホテル。トゥリバー地区で2023年に開業させるヒルトンホテルもその一環だ。
ソフト面でも宮古島でどんな仕組みづくりが必要か、我々は民間として考えて、行政と一緒に街づくりを進める。その背景には宮古島のポテンシャルがある。空港だけのビジネスということは決してないのであって、地元と一緒に活動しなきゃいけない。宮古島としてのもともとの経済圏、経済界があって、そこと一緒にやりながら、こんな要素を組み合わせたら何かができるかもしれないと、提案しながら街づくりを進めている。
――宮古島のポテンシャルとは?
伴野 規模から言えば沖縄本島、石垣島、その次に宮古島。その中で人口、島の面積は石垣島と一緒だ。ミニマムで石垣島までには伸ばしたい。新石垣空港は年間250万人の利用者数がある。宮古空港が170万人。そうなると、まだ宮古島には80万人の伸びしろがある。
ただ、80万人にとどまるかと言えば、地形的に考えるとさらに伸びると思う。東京―宮古島を半径として円をかくと、ソウル、上海、香港、台北が全部円の内側に入る。マニラ―東京とニアリーイコールだ。東南アジア、東アジアの潜在力、地理的な位置づけを考えると、いまの石垣島が上限ではない。その意味で宮古島は大きなポテンシャルがある。
さらに日本人にとっても、宮古島は何度も来てもらえる場所だ。そこに向けて観光の質を高める。宮古島の絶対的な4番バッターは海で、沖縄本島はもとより石垣島と比べても抜群に美しい。その海に次ぐ観光資源をということで、いま地元で組織をつくって体験型観光のあり方を検討している。1次産業や2次産業と観光を組み合わせれば、観光の深みが増す。ハードだけではなく、そうしたソフトの面でも開発が進んでいる。結局、最後は人だ。それをやっていこうという人たちがいる。
その意味で、宮古島はポテンシャルの高いディスティネーションだ。