選挙と振り返る沖縄の2020年(前編)

 

 一方、県政野党や、野党の立場に近い中立の立場の候補は合わせて23議席を獲得して議会構成は拮抗しているため、「オール沖縄」から県議会議員を首長選挙や国政選挙に転出させることが難しくなったり、議会運営でも慎重な対応が迫られることとなったりと、玉城知事にとっては必ずしも「完勝」と言えるような選挙ではなかったようです。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念などの影響で投票率は47%と過去最低を記録しました。

 ここでは注目したい立候補者として1人、那覇市選挙区から立候補した垣花豊順氏を紹介します。1933年生まれ、選挙時は86歳だった垣花氏は、首里城地下に埋もれている沖縄戦跡「旧日本軍第32軍司令部壕」の保存と公開について訴える候補者が1人もいないことに危機感を覚え、告示の2日前に急遽立候補を表明しました。ほとんど準備もないままに取り組んだ選挙で、最終的には16人中16番目の得票で落選してしまいましたが、供託金は返還。選挙があった6月下旬には那覇市議会が32軍壕の保存整備と内部公開を求める意見書を全会一致で可決しました。当選は叶わなかったものの、1人の立候補によって政治が動き出した例として記憶しておきたい事例です。

糸満市長選挙/糸満市議会議員補欠選挙〜自公推薦の現職市長が落選(5/31告示 6/7投開票)

 県議会議員選挙と同日に投開票された糸満市の市長選挙も、同じく投票率は過去最低の55%という数字を記録しました。この選挙で現職で2期目を目指した上原昭氏は自民党・公明党の推薦を得ましたが、新人で元市議、オール沖縄が支援にあたった當銘真栄氏に大差をつけられて落選しました。中傷ビラが飛び交う激しい選挙戦だったようですが、前回選挙で上原昭氏に敗れた元市長の上原裕常氏が応援に入り、長年の地域に根付いた活動が功を奏したようです。もう1人の候補者である仲間堅二氏は「市民ファーストの政策」として宅建士の資格を活かし土地活用に関する政策を掲げましたが及びませんでした。

 また、當銘氏が市長選に立候補したために空席となった議席を争う市議補選も行われ、定数1に対して3人が立候補。俳優で県内のテレビ番組などに多数出演している西平寿久氏は市長候補の上原氏と、空手道場館長の高江靖氏は當銘氏とセットで戦いましたが、こちらは僅差で高江氏の勝利となりました。2017年の市議選では99票で候補者中最下位だった仲村裕紀氏は、今回選挙では4239票と大幅に得票を伸ばしたものの当落争いに絡むことはできませんでした。

 後編では、下半期で行われた町村長・町村議会議員選挙を中心に振り返ります。

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