事業継続のためのリスク対処を 危機管理体制構築でOCVB講演会

 

災害によって企業に何が起こるか

 続けて薗田氏は2016年の熊本地震を例に挙げ「震度7が続けて2回発生した。その時に企業では何が起きたか。資金繰りが厳しくなり、従業員の出勤停止、リストラを強いられる。事業再開の目処が立たず、経営者や従業員の不安が募り、精神的な負担もある中では復旧のシナリオが立てられない」と説明。
 さらに、社屋や機械設備の被害、インフラの停止、仕入れ先・販売先の被災などが深刻な場合には否応なく事業が滞る事態に陥ることも指摘した。

 熊本地震の発生前に発表されていた、南海トラフに関連して30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率は、熊本市が7.6%、那覇市は20%であったことにも言及した上で「那覇でも可能性が十分にあることが分かると思う。あくまで『予測は予測として』ということではあるが、日本中どこでも発生してもおかしくないということは言えると思う」と話した。さらに、過去1771年の八重山地震では先島で1万人以上の犠牲者が出たことや、2010年には糸満で震度5の地震が発生している例にも触れ、沖縄の大きな自然災害としては台風被害も「大きな猛威だ」と付け加えた。

 「大きな災害が発生した場合、自社にどういうインパクトを与えるのかを分析したのが『インパクト分析』と呼ばれる手法。財務的な面でのインパクトについて考えた時、建物、機械、商品の修復。さらに、事業が止まった間の補填費がダブルでくる。一気に多額の出費に直面することを頭に置いて、特に大きなリスクに対策ができているかどうかを講じなければならない」

リスク対処の4パターン

 「リスク対処には回避、低減、移転、保有の4つのパターンがある」と薗田氏は説明する。回避はハード面に関わるため、設備投資などの出費が必要になる。低減は分散なども含めたもので、災害時マニュアルの作成や従業員の教育など多くの企業が実践的にすぐ取り組める。移転は保険を意味し、保有は要するに放置ということになる。「見えるリスクと見えないリスクがあって、対処する段階になって考えれば『想定外』と『保有』は違う。大きなリスクがあるかもしれないということは経営者、管理者は必ず考えなければならない」と述べた。
 自社が1番恐るべきリスクは何かということをまず考えて対応していくことが重要で「1番大事な中核事業を決めておくことで、残った経営資源で何ができるかも含めて有事の動きの速さが決まってくる。先ず最初の対処をして、その目処がついたら残りの事業へという流れもできる」

 その際に特に重要なこととして、初動対応のための環境整備を挙げた。具体的には従業員との連絡をSNSなども駆使して複数で連絡が取れるような仕組み作り、取引先との連絡、取引を中断させないことなどがこれにあたるという。さらに「自助の備えのポイントは備蓄品で、公助が届くまでの備蓄はしっかりしておく。最近のBCPのトレンドは『共助』で、自社だけが助かればいいということではなく、何か他者を手伝うことや地域貢献も含めて織り込むことが大切だ」と述べた。

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