正念場の沖縄国際貨物ハブ 県のテコ入れが急務

 

 ANAは、17年に週120便から90便に、18年には70便、去年3月には50便まで沖縄の貨物便を減らしてきた。その結果、19年度の国際貨物取り扱い量は10万トンにまで減ってしまった。今年のコロナ禍による影響を待つまでもなく、貨物ハブ事業は、実は一度も黒字化したことがない。減便は避けられない状況だった。

 ANAの見通しの甘さもある。企業の書類や工場で使う機械部品など、定時性、速達性が求められる「エクスプレス貨物」の需要が、当初の見込みより乏しかったのだ。ただ、事業縮小の決定的要因は、県の企業誘致が進まず、沖縄発着の物量が少ないことに尽きる。

 もちろん、県も手をこまねいて傍観していたわけではない。ハブ化構想はもともと、「県産品の販路拡大」「アジアでの沖縄ブランドの浸透」という発想からスタートしている。県の担当部局は、商工労働部アジア経済戦略課だ。同課は、ANAのコンテナを借り上げて県産品を輸出業者に提供する「航空コンテナスペース確保事業」を進め、19年3月には利用量が200トン近くに伸び、過去最高を記録している。

カギは大企業の誘致

 一方、企業誘致の担当は、同じ商工労働部の企業立地推進課だ。那覇地区とうるま・沖縄地区でコツコツと誘致を進めてきたが、あるANA幹部は、「沖縄ハブをしっかりしたものにするためには、GAFAやアリババ、テンセントといった国策レベルで誘致を進めるべき企業が必要」と指摘する。

 そもそも沖縄県は仲井眞知事時代、ANAを誘致して沖縄ハブ構想を実現させた。そのANAと協力して、航空機の整備基地「MRO」の誘致にも成功した。このMROの誘致をめぐってある県庁OBは、「工場の立地にふさわしいところがすでに自衛隊に使われていた。防衛省や首相官邸と交渉を重ねて、ようやく実現にこぎ着けた」(県庁OB)と舞台裏を明かす。

那覇空港にあるMROの格納庫

 さらに仲井眞知事は、中国製の携帯電話の普及を見通して、沖縄を携帯電話の修理事業の中継地にしようと、米国の携帯修理事業者の誘致に知事本人が渡米したこともあった。「そもそも沖縄ハブは、ANAの一本足打法になっている。世界中のエアラインを誘致して活性化させるべきだ」という県庁OBもいる。

 ANAは今年のコロナ禍で、外国人派遣パイロットの確保が困難として、沖縄ハブの貨物便全便を来年3月まで運休すると発表した。航空貨物需給は、旅客便の相次ぐ運休や小型化で、宅配便需要を中心にむしろ逼迫している。

 ANAは、「緊急輸送ニーズが最も高い首都圏で、臨時便・チャーター便等の機動的な対応を実現するため、成田以外の貨物便を休止し、運航に必要な乗員・整備の体制がある主基地の成田で貨物機を運航している」(ANA)と説明する。

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