キングス支える「琉大医療チーム」 治療機器購入へ資金募る、沖縄スポーツの発展見据え

 
チームドクターとして、琉球ゴールデンキングスのBリーグ初優勝に大きく貢献した琉球大学病院整形外科スポーツグループのメンバーら(提供)
チームドクターとして、琉球ゴールデンキングスのBリーグ初優勝に大きく貢献した琉球大学病院整形外科スポーツグループのメンバーら(提供)

 プロバスケットボールBリーグ2022-23シーズン、悲願の初優勝を遂げた琉球ゴールデンキングスを「医療」の面から支えた人たちがいる。琉球大学病院整形外科スポーツグループの面々だ。2020年10月にキングスと同病院がメディカルサポート協定を締結し、チームドクターとして帯同している。

 キングスは昨シーズン、長期離脱を強いられるような負傷者を一人も出さず、シーズン終盤には他チームを圧倒する層の厚さを発揮。琉大病院スポーツグループの存在がチャンピオンリングを掴み取る上で大きな役割を果たしたことは言うまでもない。

 そんなスポーツ医学に特化したスペシャリストたちが今、ある挑戦を続けている。

 スポーツ障害による痛みを沈静化する治療機器を購入するための資金を募るクラウドファンディングである。この機器は約1,000万円と高価なため、資金の捻出が難しい公立病院では購入のハードルが高い。ただ、損傷部に衝撃波を当てて効果的に治療をするため、体にメスを入れる必要がなく、子どもから大人まで幅広い層に使用が見込めるという。県民がより長く競技を続けられる環境を整え、沖縄スポーツ界全体の発展につなげたい考えだ。

スポーツ障害の「痛み」改善に効果的 衝撃波を活用

集束型体外衝撃波で治療に当たる様子(提供)
集束型体外衝撃波で治療に当たる様子(提供)

 スポーツ障害は肘や膝などを酷使し、その部分を使い過ぎることによって痛みが生じることを指す。特に腱と骨が付着している部分に炎症を起こす「腱付着部炎」が重度になると、何か物を持ったり、歩いたりする日常生活の動作にも影響を及ぼしかねない。

 投球肘やテニス肘、ジャンパー膝、足底腱膜炎などはこの一種で、学生、トップアスリートを問わず、悩んでいる選手は多いという。コロナ禍では運動を制限された人も多かったため、スポーツ障害のリスクが高まっている現状もある。

 今回、琉大病院スポーツグループが購入を目指しているのは「集束型体外衝撃波」という医療機器である。衝撃波を骨と腱の接合部に当てることで壊れた組織の修復を促す機能がある。患部や状態によって頻度は異なるが、1〜2週に一回、20分ほどの間に3~5回照射する。前述のようにメスを入れる必要がないため、患者に長期の安静を強いたり、手術箇所の回復リスクを負ったりすることなく、幹部の状態を保存したまま痛みの改善が見込める。

琉球大学病院整形外科スポーツグループのメンバー(提供)
琉球大学病院整形外科スポーツグループのメンバー(提供)

 スポーツグループのチーフを務める琉大整形外科の東千夏医師は「2020年10月からグループのメンバー全員がキングスのチームドクターとして活動することになり、飛躍的にスポーツ診療に関わる機会を得ました。プロアスリートの診療を通して、手術以外の保存治療ができるということはとても大きな意味があることを実感しました。沖縄県民のスポーツ障害に対する良い医療が提供できるよう、このプロジェクトを通して集束型体外衝撃波を購入したいです」とプロジェクトを立ち上げた経緯を説明する。

 プロジェクトはクラウドファンディング専門サイト「READY FOR(レディーフォー)」で実施している。目標金額は11,500,000円。寄付の受付は8月31日まで。資金は集束型体外衝撃波の購入費、購入後のメンテナンス費に充てる。

 詳細、支援は以下のページから。 
https://readyfor.jp/projects/ryukyu-sports_shock-wave

衝撃波治療を受けた今村「非常に効果を感じる」

2022-23シーズン、チームの顔に成長した今村佳太©Basketball News 2for1
2022-23シーズン、チームの顔に成長した今村佳太©Basketball News 2for1

 今回のプロジェクトを後押しするため、キングスの選手たちもコメントを寄せた。

 昨シーズン、著しい成長を見せた今村佳太は実際に体外衝撃波の治療を受けたことがあり、「非常に効果を感じる部分があり、本当にありがたかった」と振り返る。その上で「健康に楽しくスポーツを続ける方が増えると沖縄がさらに元気になり、僕たちもうれしいです。ぜひ応援、ご協力をよろしくお願いします」と呼び掛けた。

 運動量豊富なディフェンスでチームに貢献する小野寺祥太も「スポーツ障害の治療に体外衝撃波はとても有効で、痛みの改善や壊れた組織の修復、早期復帰が可能になります。私たち、そして沖縄でスポーツを頑張る子どもたちが楽しく、全力でスポーツを続けていけるように、応援をよろしくお願いします」と訴えた。

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長嶺 真輝

投稿者記事一覧

ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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