「ぶっ倒れるまで走る」野田主将が示した”戦う姿勢” FC琉球、1カ月半ぶりの勝利

 

“迷い”捨て、ボール奪いに

試合を総括するFC琉球の喜名哲裕監督

 今シーズンは試合を通してシュート数が一桁に終わる試合もあったが、この日は前半だけで10本。最大の課題だった守備のもろさもほとんど見えなかった。どのような準備をしてきたのか。5月15日に倉貫一毅前監督が解任となり、暫定的に指揮を執る喜名哲裕監督が説明する。

 「いい守備からいい攻撃をしたいという中で、まずは守備を整理し、勇気を持って全体でボールを奪いに行くというトレーニングを先週からずっとしてきました。奪ったボールは、まずショートカウンターを狙えるなら相手ゴールへ向かい、もし相手がブロックしてきたらしっかりボールを動かそうと言ってきました」

 それを念頭に、総括した。

 「お互いが距離感良くプレーできたと思います。今までは守備で(ボールを奪いに)行ったら交わされるとか、ディフェンスラインの間を使われるとかがあり、迷いがあったと思います。でも、そういう場面で一人が守備のスイッチを入れたらそれを尊重し、後ろの選手も着いて行ってしっかり奪おうと伝えました。ディフェンスラインが下がると、沼津さんはラインの間を使うのがうまいので、今日は下がらずに奪いに行けたのが良かったと思います」

足りなかった「倒れるまで走る気持ち」

試合後、サポーターと勝利の喜びを分かち合うFC琉球のメンバー

 下がらない姿勢。指揮官が指摘した勝因を生み出した背景の一つには、冒頭で触れた野田の円陣で発した言葉もあるだろう。ラスト約10分の時点で足をつりながらもフル出場で走り続け、自身の強い覚悟を体現した野田に、「ぶっ倒れるまで走るんで」と宣言した理由を聞いてみた。答えはこうだ。

 「琉球のちょっと前の試合を見てもらえれば分かるんですが、試合後に、選手がもう走れない、それで倒れ込むっていうシーンがあんまりなかったと思うんです。負けて倒れ込むのはありましたが。倒れるぐらいまで走るっていう気持ちが、僕は琉球に一番足りないものかなと思っていました。なので、自分に言い聞かす意味もありましたが、それでみんなも一緒にやってくれたらいいなという思いもあり、少し考えて言いました」

 指揮官が「彼が一体感をつくっている」と厚い信頼を寄せる熱量たっぷりのキャプテンに引っ張られ、徐々にチームとしてまとまり、共通認識を深めている琉球。もちろん一勝のみで全てが好転する訳ではなく、「まだまだ整理することはたくさんある」(喜名監督)のが現状だが、ホームで獲得した待望の勝ち点3を浮上のきっかけにしたいのはチーム、サポーターとも同じ思いだろう。

 次戦からは11日、18日とアウェー戦が2試合続く。敵地でさらに勢いを増し、24日のホーム戦で再び地元サポーターと共に勝利を掴みたい。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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