「金取って沖縄に」空手劉衛流の”重いバトン” 池田竜晟、6月に福岡で国際大会

 
共に稽古に励む池田竜晟(右)と喜友名諒=5月24日、那覇市の佐久本空手アカデミー(長嶺真輝撮影)

 世界最高峰の空手家たちがしのぎを削る国際リーグ戦「Karate1 プレミアリーグ2023」が6月9~11日、福岡国際センターで開かれる。日本での開催は4年ぶり。この大舞台に、沖縄から並々ならぬ決意で挑む選手がいる。男子個人形に出場する池田竜晟(興南高校ー沖縄国際大学卒、劉衛流龍鳳会)だ。

 今年1月、東京五輪男子個人形金メダリストの喜友名諒に加え、共に団体形で世界選手権優勝を果たした金城新、上村拓也の”三枚看板”が同時に競技を引退した劉衛流龍鳳会。池田はその重いバトンを継ぎ、次世代エースの1人として期待を集める。金メダル獲得を目標に掲げ、日々鍛錬に汗を流す池田を取材した。

喜友名らが直接指導「これ以上の環境はない」

 5月24日正午過ぎ、那覇市泊にある佐久本空手アカデミーを訪ねると、道場には熱気が充満していた。

 「頭を突っ込まない。悪い癖だよ」

 「形のリズムが一辺倒だとインパクトが弱い」

 「四股立ちで腰を落とし過ぎてる」

 現役時代、世界選手権個人形で3連覇を果たした師匠の佐久本嗣男氏の厳しい声が飛ぶ。その都度、池田は一つ一つの突きや蹴り、体の動かし方を細かく確認。アーナン、アーナンダイ、オーハンダイ…。劉衛流を象徴する形を、合間の時間をほとんど置かずに必死の形相で打ち続け、自らを追い込んでいた。

喜友名諒(右)から直接指導を受ける池田

 道場には喜友名、金城、上村の姿も。壁一面の大鏡の前で1人ずつ池田と同じ形を打ち、その度に感じたことを助言する場面も見られた。「これ以上ない環境で、感謝してもしきれないです」と池田。ほぼ毎日、世界トップに君臨し続けた先輩たちから直接指導を受ける。

 「もっと腕を引けるように」「絶対に誰にも負けないポイントが必要」などと指導に熱を入れていた喜友名は、池田について「まだ気持ちと体の動きが一致していないと感じるので、そこがはまった時にもっと力が出ると思います」と指摘する。プレミアリーグに向けては「今までずっと一緒に稽古をしてきました。やってきたことを信じて、思い切り形を打てば、結果は着いてくると思います」とエールを送った。

最高成績は銅メダル「今が最高の出来」

 世界各地で原則、年間5回開催されるKarate1プレミアリーグは、世界ランキング100位までの選手が出場できる最高峰の大会。形2種目、組手10種目が実施され、成績に応じてポイントを加算して年間王者を決める。

 池田は当時高校生で、2016年にあった沖縄開催を皮切りに不定期で出場しており、2021年10月のロシア・モスクワ大会で獲得した銅メダルが過去最高成績だ。現在の個人形での世界ランキングは27位。当時に比べて成長した点を聞くと、自信の深さがうかがえる答えが返ってきた。

 「当時の体重は67~68㌔でしたが、今は74~75㌔まで増やしました。強く突く、強く蹴るという根本的な部分は強化できてると思うので、技の深さや体の使い方も含め、これまでの自分の中では今が最高の出来です」

稽古に汗を流す池田

 一方で、前述のように世界クラスの空手家たちと日々を送る中で、自身の未熟さも痛感している。

 「行けるところまで行き着いた先生や先輩たちと一緒に稽古をしていると、やっぱりまだ先輩の方が力あるなとか、気迫に押されるなとかを感じることはあります。これまでで一番いい仕上がりではありますが、まだまだ足りない、終わりはないということも感じます」

 ハイレベルな環境下に身を置くことで「満足したことはない」と言い、向上心が尽きることはない。

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