時代の変わり目、何を守るか検討必要 復帰51年 我部政明琉大名誉教授

 
我部政明琉球大学名誉教授

 5月15日で、沖縄は本土復帰51年となった。日米関係などで多くの著作がある琉球大学の我部政明名誉教授に、沖縄と政府との関係、玉城デニー知事が推し進める地域外交、さまざまな変化が同時に起きている沖縄の現状に対する認識などを聞いた。

-復帰後、沖縄は政府に対して基地問題などで「抗議」する一方、経済振興では「要請・交渉」もしてきました

 弱い立場であれば、珍しいことではない。復帰前の米国統治時代から行っていて、復帰後は当事者が変わったにすぎない。

 ただ、それをいつまでも続けることが良いことなのかどうかは、今後は考える必要がある。

-翁長雄志知事時代には、政府との対立が深まり、現在の玉城デニー知事は従来の「抗議」と「要請・交渉」のスタイルに戻ったようにも見えます

 事故や政治状況で訴えの盛り上がりに大小はあるが、沖縄側は特に変わっていない。政府側は小泉政権以降、従来の「地方と折り合いをつける」姿勢から変化した。そのため、沖縄の声が東京に届かなくなった。

-玉城知事が推進する地域外交について

 地域外交は、沖縄が安全になり、豊かになり、沖縄だけが犠牲になる仕組みを変えていきたいということを目標とするべきだ。

 アジア諸国には、(中国の台頭に対抗するため)沖縄の米軍基地は必要だと考える保守系の政治家が多い。そういう人たちに、「地域が平和で安定して豊かになり、そのつけが沖縄に来るというのは、おかしい」と主張していかなければならない。

 この点をはずし、金儲けだけしたいのかということになると、台湾、フィリピン、中国の企業と商売すれば良いという(だけの)話になってしまう。

 一方、地域外交は弱い立場からスタートする。言いたいことだけ言うのではなく、相手が何を考えているか、何を欲しいと思っているか丁寧にふるい出す努力が必要だ。

-安全保障、観光、都市化など、沖縄ではさまざまなことが同時に起きています。今後の沖縄についてはどう考えますか

 沖縄は、周りの強い影響があるところにいる。(周辺から)どんどん入ってくることは避けられない。沖縄の人が、自分たちの守るべきものは何かを考えなければならない。

 (明治維新の時)日本はまさにそうだった。19世紀の半ばごろ、欧州諸国が日本の周辺にやってきて、(英国と中国の間に)アヘン戦争も起きた。そういう中で、これまでの武士が威張っているような社会を内部から壊していった。

 台湾情勢、米中対立を見ても、時代は大きく変わろうとしている。また、中国の力が、これほど大きくなったことは、この200年間なかった。時代の変わり目に、県民は考えることを始めなければならない。

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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