新陸上チーム「SUMMIT」 沖縄中長距離のトップ選手が集結したワケ
- 2023/5/10
- エンタメ・スポーツ
合同練習の効果大 中長距離ならではの事情
SUMMIT自体も陸上競技連盟に団体登録を行なっており、チーム内にはSUMMIT所属の選手もいれば、濱崎や外間のように別団体に所属しながらSUMMITでも活動をしている選手もいる。所属の違いを超えて共に練習するのは、中長距離ならではのメリットが大きいためだ。濱崎が説明する。
「短距離はある程度個々でも練習ができますが、長距離の場合は1人ではできない練習もあります。例えば、数人が順番に前に出て引っ張り合い、速いペースを維持できれば、心拍数を上げたままで長い時間を走る練習ができます。実際に、自分も『1人でやるには限界がある』と悩んでいた時に永山と出会い、ペースメーカーをしてもらうことで、この2年ほどでペースの質が上がりました。このように、SUMMITでは所属チームに同じレベルで練習ができる相手がいない選手のサポートもできます」
沖縄工業高校を卒業後、亜細亜大学に進学して東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)に2度出走し、実業団の小森コーポレーション時代には主将として全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)にも出場歴のある濱崎。長らく沖縄の長距離界を先頭で引っ張ってきたが、近年は34歳という年齢もあり、一線で競技を続けることが難しいと感じる時期もあった。
それでも永山さんと出会い、外間や安里など油の乗った選手たちと練習を共にする中で「自分一人では出せないようなスピードを出してもらい、それに粘って着いていくという練習ができたことで、スピードは実業団の頃に比べても落ちてないし、まわりからは『濱崎は年々早くなってる』と言われることもあります」と全盛期の力を取り戻してきている。今月下旬にはカナダのオタワマラソンに出場し、自身が2017年に出した沖縄県記録の更新を狙っているという。
後継の受け皿に「若い世代の力に」
全国高校駅伝では毎年40番台が定位置で、なかなか国内のトップで戦えるランナーを輩出できてこなかった沖縄の中長距離界だが、2021年に北山高校の男子が全国駅伝で27位に入り、40年ぶりに県勢最高記録を更新。その時のエースだった上原琉翔(國學院大学2年)が今年の箱根駅伝で当時1年生ながら7区を走り、区間6位の力走で國學院大の総合4位に貢献するなど、少しずつ力のある選手が増え始め、にわかに盛り上がってきている。
ただ、陸上は競技者の裾野が広い一方で、大学卒業後に実業団で競技を続けられる選手はほんの一握りのトップアスリートだけだ。実業団チーム自体が少ない沖縄では、その数は極めて少ない。
そういった環境を念頭に、上原が中学生の頃に指導をしていた濱崎は「昔に比べて、今は県外で頑張っている沖縄出身の選手は多くいます。彼らが沖縄に帰ってきた時に競技を続けられる環境を整えておく責任が自分にはあると思っています。SUMMITがその受け皿の一つになりたいです」と語り、後継の未来のために奔走する。
永山さんも「若い世代の力になりたいです。練習だけでなく、例えば記録を狙いたい選手と一緒に大会に出てペースメーカーを務めることもできます。SUMMITには県内のトップ選手がたくさんいるので、中学生や高校生の前で沖縄県記録を出して陸上界を盛り上げたいです」と力を込める。
沖縄中長距離界の底上げを目標に立ち上がったSUMMIT。所属選手のレベル向上から次世代のサポートまでを視野に入れ、力強く走り出した。