新陸上チーム「SUMMIT」 沖縄中長距離のトップ選手が集結したワケ
- 2023/5/10
- エンタメ・スポーツ
近年盛り上がりを見せる沖縄の中長距離界に、また楽しみな動きが出てきた。
4月、沖縄トップクラスの中長距離選手たちが、互いのレベル向上や経済的な課題克服などを目的に陸上チームを結成。その名は“頂上”を意味する「SUMMIT(サミット)」。ロゴには剣のマークをあしらい、「山の頂上に『県記録』という剣を刺そう」という決意を込めた。県内では数少ない「ペースメーカー」として活動する永山大誠さん(24)が代表兼ヘッドコーチを務める。
チームにはマラソンで2時間11分26秒の沖縄県記録を持つ濱崎達規(34)=なんじぃAC=、800mと1500mで全日本実業団対抗選手権などに出場歴のある外間勇太(26)=友睦物流=、昨年1500mで日本学生対校選手権(日本インカレ)に出場した安里良也(22)=SUMMIT=など力のある選手が名を連ねる。所属先の違いの垣根を超えて選手たちが集結した理由とはー。
永山代表「ペースメーカー」として活動
現在の所属選手は男子7人、女子2人の計9人。南風原町の黄金森公園陸上競技場を主な練習拠点で、スポーツ整体専門の高里整体(那覇市)を経営する高里智樹さんもトレーナーとして参画している。
結成のきっかけは、永山さんのこれまでの活動にある。
もともと1500mと5000mがメインで、陸上の名門・那覇西高校時代には県高校駅伝で区間賞を獲得する程の選手だった。沖縄国際大学に進学後も競技を続けていたが、1年の冬に左足のアキレス腱を痛め、「もう陸上は終わろう」と一線を退くことを決めた。しかし、リハビリでお世話になっていた高里さんらに引き止められ、足が治った後に周囲の勧めもあって当時長距離に力を入れ始めたばかりの沖縄大学陸上競技部の練習を支援することになった。
そこで健脚を生かし、選手を高いレベルかつ均等なペースで引っ張って記録を伸ばす手助けをする「ペースメーカー」を始めると、沖大を練習拠点としていた外間や安里など一線級の選手のサポートもするようになった。すると陸上関係者の間で「沖大がいい練習をしている」と話題になり、知り合いづてで濱崎の練習も手伝うように。濱崎がコーチを務める陸上クラブ「なんじぃAC」でも学生に指導を始めるなど活動の幅が広がっていった。
継続できる体制の構築 メインスポンサーには友睦物流
ただ本業は営業職で、陸上のサポートはほぼボランティアだった永山さん。自身は「人のために走るのが楽しい」と十分にやりがいを感じていたが、選手の県外遠征に付き添うこともあり、当時から共に活動をしていた高里さんがその状況を憂慮してチーム結成を促し、それに賛同した濱崎が後押ししてSUMMITが結成された。「憂慮」の理由をこうだ。
「永山を中心にだんだんコミュニティが広がって、所属が違うメンバーが垣根を超えて合同練習をするようになりました。ただ、永山がいろんな選手のサポートをする中で、時間を含め、彼だけがいろんな意味で削れていっているように感じたんです。だから、彼の活動に付加価値を付けたいと思いました。SUMMITで陸上教室なども開き、ちゃんとお金が入ってくる仕組みをつくり、永山の活動やこの練習環境を継続できる仕組みをつくろうと考えました」(濱崎)
永山さんにSUMMIT代表という「所属」と「肩書き」を付けたことで、サポートの依頼を受け付ける窓口ができ、既に陸上教室の依頼もきているという。社に陸上競技部があり、日本選手権に出場するレベルの有力選手を抱える友睦物流(糸満市)がメインスポンサーになることも決まり、活動の地盤を固めつつある。