県産牛乳「飲んで」春休み需要低下に危機感 県酪農組合が無料配布でPR
- 2023/3/29
- 経済
沖縄県酪農農業協同組合(神谷翔平組合長)が28日午後、那覇市泉崎の県民広場で県産牛乳の無料配布を行った。今は学校の春休みシーズンで給食需要が無く、余剰乳が増加することが予想されるため、消費を喚起することが狙いだ。県内の酪農家はウクライナ侵攻に端を発した飼料価格の高騰などで苦しい経営が続いていることも背景にある。
「あまーい」子どもたちが笑顔に
無料配布は正午から開始した。180ml入りパックの県産牛乳を400個用意し、「県産牛乳 無料配布中!」「酪農家は頑張っています。応援してください」などと書いたのぼりやパネルを手にした組合員らが通行人に直接手渡した。渡す際には「アレルギーは大丈夫ですか?」などと気に掛けながら、「どうぞ飲んでください」と笑顔を向け、自慢の牛乳の試飲を勧めた。
晴天に恵まれた正午過ぎは気温が20℃を超え、汗ばむ陽気だったこともあり、足を止める通行人も多く見られた。通り掛かった子どもたちは嬉しそうに牛乳パックを手に取り、「あまーい」「美味しいー」と歓声を上げながら一気に飲み干し、広場には活気があふれた。
酪農は生き物である牛を相手にするため、需要が減る期間だからといって生産を止めることはできない。それを念頭に、神谷組合長は「春休みは学校向けの供給が止まって牛乳が余ってしまいます。ただ、子どもたちが家にいる時間も増えると思うので、家族でたくさん県産牛乳を消費してほしいです」と呼び掛けた。
県産牛乳が必要な理由とは
近年、酪農家にとって極めて厳しい社会状況が続いている。日本は畜産に欠かせない配合飼料の確保をほぼ輸入に頼っているが、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に穀物産地である両国からの輸出が滞り、価格が急騰。さらにコロナ禍で学校が休校となり、出荷先の大きな割合を占めていた給食が停止したことで、全国的に離農が相次いだ。最近は販売価格も上がっているが、農家経営は依然として厳しいままだ。
さらに亜熱帯地域の沖縄では、これから夏に向けて本格的に気温が上がっていく。乳牛は北海道のホルスタインを導入しており、人間が夏バテで食欲が減退するのと同様に、牛も暑さが厳しいとストレスで生産量が低下するため、大型扇風機を回したり水分を多めに取らせたりするための暑熱対策コストがかさむ。今はただでさえ電気代を中心に光熱費も高騰しているため、さらに経営悪化に追い打ちをかける可能性は高い。
神谷組合長は「農家は厳しい状況の中、行政などの補助を受けながらなんとか頑張っています」とした上で、県産牛乳の存在意義をこう語った。
「沖縄は離島県なので、県外産だけに頼ってしまうと台風で物流船が止まってしまうなどの非常時に牛乳の供給が滞ってしまいます。消費者のためにも、県産牛乳の生産を続けていきたいです。また、身近に農家があることで乳搾り体験などもできるので、子どもたちの食育にも貢献できると思っています」
食生活に欠かせない牛乳。物価高で各家庭の家計も厳しいが、できるだけ牛乳を「飲む」ことで農家を応援したいところだ。