新種だったヤエヤママルヤスデ 学名由来は八重山の民話「赤馬(アカンマ)節」
- 2023/1/20
- 社会
法政大学や京都大学などの研究チームが、八重山諸島に生息する日本最大の「ヤエヤママルヤスデ」(和名)が同諸島固有の新種だったことを論文で発表した。名付けた学名は「Spirobolus akamma(スピロボルス・アカンマ)」。ヤスデの漢字表記が「馬陸」であることや本種が赤と黒の体色の美麗種であることに加え、八重山諸島を代表する民話である「赤馬(アカンマ)節」にも由来しているという。
ヤスデはムカデなどと共に多足亜門を構成している。ムカデは他の小動物を捕食するため、顎肢(がくし:足が変化してできた口器)に毒を持つことが多いが、ヤスデは腐植の有機物を餌としており、動きも比較的ゆったりで毒を持つ顎肢もなく咬まれることはない。
未解決だった分類学的位置付け
研究を行ったのは環境省レッドリスト委員である法政大学自然科学センター・国際文化学部の島野智之教授、京都大学理学研究科大学院生の加藤大河さん、同大の中野隆文准教授、元環境省レッドリスト委員の高野光男さん。1月12日に公開された日本動物分類学会の「Species Diversity(スピーシーズ・ダイバーシティ)誌」に論文を発表した。
ヤエヤママルヤスデは体長6.5~7.5cmと日本最大で、八重山諸島の石垣島、西表島、小浜島で記録されている。2006年からマルヤスデ属Spirobolusの未記載種のまま絶滅危惧II類(VU)として環境省版レッドリストに記載されていたが、分類学的な位置付けは長らく未解決だったという。
生息地で個体数減少 保全に向け研究
「本種の保全を考える上で、分類学的に明確にすることは必要である」として、研究に着手した。
研究の結果、分子生物学的なアプローチでは核とミトコンドリア内の遺伝子の部分塩基配列情報がSpirobolus属に所属している事を示唆。さらに形態学的な視点からは、後脚の側縁に4つの鋸歯(きょし:のこぎり状の歯)を持つ点などで中国大陸や台湾の固有種と異なっていたため、論文に新種として記載した。
ニュースリリースでは、生息地における個体数が減少していることから「今後、ますます保全の対象として、重要かつ貴重な種となる」と指摘している。