「時間というフィルター」を意識して紡ぐ言葉と音 ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文さんインタビュー<後編>

 
後藤正文(Vo&G) photo by Tetsuya Yamakawa 

 今年3月にリリースされた新譜『プラネットフォークス』を引っさげて3年半ぶりに来沖したASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)が、11月19日に文化芸術劇場なはーとでツアーファイナルとなるライブを行った。大盛況で幕を閉じた沖縄公演のライブ直前、フロントマンの後藤正文さん(Vo&Gu)が単独インタビューに応じてくれた。後編となる今回は、6年前に沖縄を訪れた時から考え続けていること、過ぎゆく時間の中で言葉と音を紡いでいくこと、そしてバンドのアティテュードにも話が及んだ。今現在の後藤さんの言葉を、沖縄公演のライブ写真とともにお届けする。

(前編:「分断しながらでも俺たちは生きていける」ASIAN KUNG-FU GENERATIONが3年半ぶりの沖縄公演 後藤正文さんインタビュー


photo by Tetsuya Yamakawa

沖縄を語る時、瞬時にボーダーが引かれている

 ―以前、後藤さんと小説家の古川日出男さんが『THE FUTURE TIMES』(後藤さんが編集長を務める新聞)で、沖縄と福島を巡る対談の中で「ボーダー」について話をしていました。様々な場所や局面でたくさんのボーダーが引かれている現状の中で、あの時(2016年当時)と今現在で、沖縄に向ける目線の変化や感覚の違いってあったりしますか。

「ずっと思ってるのは、どうして沖縄だけが負担を強いられるのかってことです。それに尽きると言うしかないですね。いわゆる太文字の『東京』は何を引き受けているのか、何も引き受けてないんじゃないか、ということがあると思ってます。
 だからそこには幾重にもボーダーが積み重なってて、もうそれが言語化するまでもなく身体化されちゃってるんですよね。みんなが国家を無用に信じてるのと同じように。沖縄を語る時、瞬時に何かボーダーを引いてるんですよね。だから、この前のひろゆきが辺野古で素朴な問いを投げかけるならば『どうしてここにだけこれほどの基地があるのか』とか、そういうもっと前段の素朴な疑問を持とうよ、とも思いますし。

 でも彼がいきなり沖縄に来て、あそこに座り込む人たちに疑問を持つということは分からないでもない気がして。僕も初めて行った時、何の仕事をしながらずっとここにいて抗議をし続けることができるんだろうってことは思いました。でも当時はそれを瞬時に書いたりするような場所もなかったし、自分の中でよく揉んで、何年かかけて行ったり来たりしてるうちに構造のことを少しずつ理解していきました。

photo by Tetsuya Yamakawa

 みんなインスタントに話し過ぎなのかなっていうのはありますよね。今話題にもなってますけど、Twitterがなくなると短期的なビジネスとかにはめちゃくちゃ影響があると思うけど、それで滅びるようなものはもう滅びるしかないのかなとも感じるし。積み上げていくことが重要で、それをやらなきゃなと思うから。6年前と今とでどれくらい自分の考えが進んだかというのはちょっと難しいところもあります。でもあの時、古川さんと一緒に来て感じたことは大きかったから、今でもすごい考えてます。
 福島と沖縄で似てるところってどこだろう、って。これは、結果的にやっぱりいわゆる東京に押し付けられた人たちだなと。東京のために汗かいてる人たちが東京のために傷つく、そういう構造になっている。この場合、東京と言うか国家だったりするかもしれないですけどね。そこに無意識には生きられないよね、という気持ちはあります。負担が偏りすぎている。東京も基地の問題は横田とかでは考えてはいるとは思いますけど。でも何だろうな…いわゆるローカルの東京じゃない東京の人たちは、そういう負担は感じてないはずですからね。

 つまり、東京だろうが沖縄だろうが福島だろうが、徹頭徹尾ローカルに押し付けているわけですよね。そうした地域から離れた、“概念としての東京”が全く引き受けてないっていう状況。そんな構造があるんだなと感じています。だから、あながち東京っていうボーダーを引くのも危うい。『東京』ってカギ括弧をつけなければならないな、とも思いますね」

photo by Tetsuya Yamakawa

 ―『THE FUTURE TIMES』の対談で後藤さんの「もっと言葉を尽くす必要がある」という発言に対して、古川さんが「インスタントに物事を受け止めて単純化することに抗わないといけない」と応じていました。この点で言うと、言葉を尽くすことについて今はあの当時からかなり悪化してると思うんです。SNS全盛で。だからその中で、古川さんが言ってたように「内部と外部っていうくくりをどう無効化していくか」ことを考えないといけないのかなと感じています。

「良くないですね、状況は。何もかも加速し過ぎてるというか。とにかく早く結論出せとか、その場で論破したやつが勝ちみたいな風潮もあるし。この『論破』って文字通りの論破ではなくて、実質的には屁理屈が上手いやつが勝ちみたいな感じですもんね」

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