映画『シネマ組踊 孝行の巻』映文連アワード受賞、1月東京公開

 

 約300年受け継がれてきた沖縄の伝統芸能「組踊」を映画化した作品『シネマ組踊 孝行の巻』が、映文連アワードにて優秀企画賞を受賞し、11月28日に表彰式が行われた。本作は来年1月から東京で公開が決定した。各界の著名人からも賞賛するコメントが寄せられるなど、公開に期待が高まっている。

シネマ組踊とは

 1719年、躍奉行・玉城朝薫によって創作された「組踊(くみおどり)」。初演から約300年間琉球の国劇として継承され、1972年本土復帰の年に国の重要無形文化財に指定、2016年にはユネスコ無形文化遺産に登録された沖縄の伝統歌舞劇である。国立劇場おきなわが開館し定期上演が開始されてからは、認知度も徐々に高まりつつある。

 「シネマ組踊」は、組踊を新しい切り口で映像化するというプロジェクトで、実際に上演する舞台の記録映像とは異なり、舞台の客席からでは伝わりにくい役者の繊細な表情や、緊迫感あふれる演奏者の音楽、流麗なセリフ回しなど、組踊の様式美を余すところなくとらえている映像に仕上がっている。みどころの解説や字幕も付いており、見巧者だけでなく初心者も楽しめるような工夫がなされている。過去の事例としては、浦添市によって2014年『二童敵討』・2015年『執心鐘入』の2作品が作られた。

 今年作られた『孝行の巻』はその3作目といえる作品であり、過去2作が浦添市内への観客誘致を目的に作られたのに対し、本作は初めから劇場で公開する映画として製作されたのが大きな違いである。

 製作は、一般社団法人ステージサポート沖縄と、株式会社エコーズ。エコーズの代表横澤匡広氏は、過去2作に携わったことから組踊の存在を知り、その面白さに可能性を感じたという。「シネマ組踊を通じて、組踊って面白いんだなと素直に思った。コロナ禍をきっかけに、ステージサポート沖縄と話し合って3作目を自分たちの手で作ろうと決めた」

プロデューサー横澤氏(下段左側)と監督宮平氏(上段右から3番目)

 組踊は現在70演目ほどあると言われる中でも、『孝行の巻』を映画化しようと思ったのは、「舞台で上演する場合は大掛かりな仕掛けがあって、県外ではなかなか上演できないため、映画なら迫力を損なうことなく全国へ届けることができるから」だという。

 監督は『アンを探して』で国際映画祭「第5回アジアン・フェスティバル・オブ・ファースト・フィルム」最優秀作品賞と最優秀監督賞の2冠に輝いた、宮平貴子氏。

 宮平氏は、最初にオファーが来た時「何かの間違いかと思った」と吐露した。「今までの人生で伝統芸能にほとんど触れたことがなく、組踊も生で観たことがない自分に、そんな大役が務まるのか」と躊躇したという。これまで、いわゆるオリジナルの劇映画を手掛けてきた宮平氏にとっては大きな挑戦だった。

撮影の様子

 撮影は、昨年国立劇場おきなわの大劇場にレールやクレーンなど大掛かりな撮影機材を持ち込み、3日間劇場を借り切って実施された。出演者たちも、同じシーンを何度も撮り直したり連日同じ化粧にしなければならないなど、普段の公演とはまったく違う演技・演奏の仕方に苦労したという。

順風満帆と思われたが

 そうして完成した映画『シネマ組踊 孝行の巻』は、今年4月16日の第14回「沖縄国際映画祭」にワールドプレミア特別招待され、 監督や出演者は3年ぶりに復活したレッドカーペットへの出演を果たした。

出演者と監督が歩いたレッドカーペット

 映画祭の時点ですでに桜坂劇場での公開が決定しており、順調なスタートに思われたが、大きな課題をはらんでいた。製作費はなんとか工面できたものの、配給宣伝費まで手が回らないという事態が起きていたのだ。映画業界では“宣伝費不足はインディペンデント映画ならばよくあること”と言われるものの、「せっかくの作品をお蔵入りさせてはいけない」という思いから、配給会社ククルビジョンはクラウドファンディングを立ち上げることにした。6月から約1か月間実施した結果、220万円強を集めることに成功した。この活動は、資金集めと同時に映画の宣伝にもなるという良い効果を生み出していた。

クラウドファンディングでの資金調達

優秀企画賞受賞

 桜坂劇場で上映中の9月16日、吉報が舞い込んだ。映文連アワード2022の受賞である。公益社団法人映像文化製作者連盟主催の映文連アワードは、プロフェッショナルによるプロフェッショナルのためのコンクールとうたう映像賞で、今年は全国から寄せられた160の映像作品から32作品が選ばれ、『孝行の巻』はパーソナル・コミュニケーション部門において優秀企画賞を受賞した。

映文連アワード2022受賞式

 そしてこのたび11月28日、六本木の新国立美術館で表彰式が開催され、式の模様はライブ配信も行われた。賞状とトロフィーが授与され、「この場をお借りして出演者、スタッフ、関係者の皆様、そして300年間伝統をつないできた先達の先生方に御礼申し上げます」という受賞者コメントが寄せられた。その後、審査員による講評と記念写真の撮影、最優秀作品の上映会が行われた。翌29、30日には渋谷ユーロライブで全作品の上映会が実施された。

受賞者記念撮影の様子

東京公開決定

 配給会社によると、来年1月28日から2月3日までの1週間、渋谷ユーロスペースでの上映が決定しているという。公開に先駆けたマスコミ向け試写会が11月29日銀座TCC試写室で行われ、多くの関係者が詰めかけた。

 舞台演出家・宮本亞門をはじめ、お笑い芸人・映画監督の照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)、シンガーソングライターのCocco、映画監督の中江裕司、俳優・佐久本宝などからも賞賛コメントが寄せられ、300年の時をこえて受け継がれてきた伝統芸能「組踊」の色褪せない力強さに各界からの関心も高いことがうかがえる。

 宮平氏は「本作は、本編映像だけでなく歴史やみどころを知るための解説も付いており、日本語字幕もあるので、知識ゼロで楽しんでもらえる。“伝統芸能は自分にはわからない”と考えている人にとって無意識のブロックを取り去る絶好の機会なので、ぜひ多くの方に観てもらいたい」と東京の観客に期待を寄せている。

映画『シネマ組踊 孝行の巻』特設ページ
https://kukuruvision.com/cinema_kumiodori_koko/

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大野 順美

投稿者記事一覧

一般社団法人ステージサポート沖縄代表。琉球芸能プロデューサー。
東京生まれ。新国立劇場、文化庁勤務を経て、2003年国立劇場おきなわの開場スタッフとして依頼されたのを機に沖縄へ転居。その後(財)沖縄県文化振興会で勤務、沖縄の文学・古謡の事業を担当。2010年組踊を中心とした沖縄伝統芸能の舞台制作として独立、県内外や海外での公演を手掛ける。
大好きな組踊をひとりでも多くの人に知ってほしい&良い舞台が観たいという一心で、組踊と名のつく仕事なら何でもやる人。

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