FC琉球の強化部トップに竹原稔氏 J1サガン鳥栖で社長10年、実績十分

 
来シーズンに向け、チーム強化を誓う(左から)倉林啓士郎社長、竹原稔氏、喜名哲裕氏=11月17日、八重瀬町スポーツ観光交流施設

 来シーズンからサッカーJ3で戦うFC琉球は17日、練習拠点である八重瀬町スポーツ観光交流施設で記者会見を開き、J1サガン鳥栖の運営会社「サガン・ドリームス」で10年間社長を務めた竹原稔氏(61)が強化部のトップとなるスポーツダイレクターに就任すると発表した。竹原氏を支えるスポーツダイレクター補佐には、球団の育成年代の基盤をつくり、昨シーズン途中まで監督を務めた喜名哲裕氏(45)が就き、アカデミーアドバイザーも兼務する。

売上を12倍に 国際化、育成強化にも精通

 竹原氏は1960年12月生まれで、兵庫県出身。1996年に薬局チェーンの「ナチュラルライフ」を創業後、2011年に当時J2だったサガン鳥栖の代表取締役社長に就任すると、初年度でいきなり球団初のJ1昇格を達成。J1参戦初年度の2012年を過去最高成績タイの5位で終え、チームはその後も現在に至るまで一度もJ2に降格することなく、J1に定着している。

 地方クラブにも関わらず、イタリアの名門ユベントスFCとの交流やオランダの名門アヤックスとの業務提携を実現するなど国際化を推し進めたほか、2018年には元スペイン代表のフェルナンド・トーレスを獲得するなど話題を呼んだ。U-18やU-15など育成カテゴリの強化にも定評がある。2021年までの10年間でサガン鳥栖運営会社の売上を約12倍にまで増やした。

 会見で挨拶したFC琉球の倉林啓士郎社長は「来シーズンは球団創設20周年を迎えます。5年ぶりにJ3で戦うことになりますが、やることは変わらない。まずは1年でJ2に再昇格し、沖縄からJ1のクラブをつくる。そのための体制をつくり始めています」と強調。その上で「昨シーズンはコロナ禍でけがもあって十分な戦力を供給できなかったことが一番の反省点。ベテランと若手の融合など、この2人ならチームの一体感をつくってくれると思っています」と期待感を示した。

2つのサッカー”融合”を

会見で満面の笑みを浮かべる竹原氏

 会見に臨んだ竹原氏は「サガン鳥栖で経験した数多くの失敗や学んだことを、琉球に最大限還元していきたいです。必ず優勝という形でJ2昇格を成し遂げたいという決意でやって来ました」と挨拶。「沖縄の人として頑張りたい」という思いを胸に、家族で沖縄に移住したという。

 昨シーズンのFC琉球は、喜名体制下ではパスをつなぐ攻撃的なサッカーを展開し、途中から監督に就任したナチョ・フェルナンデス体制下では守備を固め、積極的にクロスを上げるサッカーに転換した。活躍した選手は他チームからのオファーが来ているという厳しい現状もあるが、今後のチームづくりにおいては「降格という悔しい経験をバネに、2つのサッカーをどう融合していくかが大事。相手のスタイルに対応できるサッカーを育てていきたいです」と展望した。

 育成年代の強化についても「喜名さんと一緒に、沖縄から日本代表、そして世界に羽ばたく選手を育てる基盤を作っていきたいです」と意気込みを語った。

 経営面においても、沖縄はアジア圏に近く、観光地であることを念頭に「韓国やインドネシア、タイなどのクラブオーナーと話すと『沖縄は素晴らしい』と言われます。沖縄に来て、サッカーを見て観光するということも実現できる。素晴らしい立地のポテンシャルを持っていると思います」と高く評価した。

喜名氏「子供たちに世界で活躍してほしい」

会見で意気込みを述べる喜名氏

 喜名氏は2017年からFC琉球のヘッドコーチを務め、2021年10月に監督に就任したが、昨シーズンは序盤戦から長らく最下位に沈むなど厳しい状況が続き、2022年6月に解任された。会見では冒頭の挨拶で「今シーズンの成績について、重く責任を感じております」とし、その上で「本当に迷いもありましたが、沖縄の地にあるFC琉球をさらに強くし、魅力あるチームにするため、少しでもサポートできたらと思い決断しました」と決意を語った。

 現場を一時離れた後、各カテゴリの試合に足を運ぶ中で「才能に溢れた子供たちが多い」と改めて実感したと言い、「その子供たちがこの地で育ち、世界で活躍してほしいという強い思いを感じました」と述べた。スカウトも担当する中、沖縄出身の選手についても「クラブとしても求めてると思うし、私も重要視してます」と説明した。

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長嶺 真輝

投稿者記事一覧

ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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