【歴代知事②】「沖縄の産業まつり」を創設 ”土着”の政治家、2代目・平良幸市

 

当選直後「地籍明確化問題」に直面

沖縄県議会初の施政方針演説を述べる屋良朝苗知事(手前)と当時県議会議長だった平良幸市氏=1972年8月2日、沖縄県議会(沖縄県公文書館所蔵)

 1972年の日本復帰後、初代沖縄県議会議長に就任。76年には、復帰後の初代県知事である屋良朝苗の後継として革新各政党から出馬要請を受け、立候補を決めた。同年2月に那覇市内で開いた会見では「私は革新県政をさらに前進させ、沖縄に即した自治確立のために各位の誠意あるすすめを受諾する決意をした」と述べた。

 対立候補は、同じ社大党で第2代、第4代委員長を務めた安里積千代だった。衆議院議員を務めていた安里は復帰後の2期目途中に民社党(当時)に籍を移しており、県政奪還を掲げる自民党が民社党に働き掛け、連合体制を築いて担ぎ出した。復帰前、2人は社大党の委員長、書記長の名コンビとして知られ、この一騎打ちは「宿命の対決」として注目を集めた。

質問に立つ当時立法院議員の平良幸市氏(左から2番目)。左隣にいるのは、同じ社大党で立法院議員だった安里積千代氏=1966年3月16日、立法院(沖縄県公文書館所蔵)

 その影響もあってか、投票率は復帰後の知事選で現在に至るまで過去最高の82.07%。結果、270,880票を獲得した平良が安里に32,597票差を付け、2代目知事に就いて革新県政を継続させた。

 当選後、すぐに直面したのが地籍の明確化問題だ。復帰後も沖縄の基地を維持するために立法された「公用地暫定措置法」が1977年に5年間の期限が切れるのを前に、政府は平良が知事に就いた76年、期限切れ後も基地を維持するための同法の延長と「基地確保法案」の制定に動き出していた。

 基地確保法案は基地内の地籍が不明である限り、国がその土地を使用することを定めたもので、平良は反対を表明。「国は復帰の際、その責任において、沖縄の特殊な状況に対応する地籍明確化のための特別法を制定すべきであったが、復帰5年を経ても国の姿勢は不明確であり、責任の所在もあいまいである」と明記した「地籍明確化法案要綱」を作成し、国に提出した。国会の与野党はこの要求に応え、地籍明確化法が制定された。ただ、附則で公用地暫定措置法が5年間延長され、基地確保の根拠は継続されることになった。

 この附則を巡り、不満に満ちた平良の談話が残る。「国民の1人として言うなら、言論の府である国会で、このような重要な法案を、十分に議論せずに可決、成立させたことは残念である。(中略)安保条約や地位協定を検討して、憲法の基本精神にさかのぼって議論し、県民の犠牲の労苦にどう報いるかを考えるべきである」

地場産業の振興に注力 県産品への理解深める

「第39回沖縄の産業まつり」の入口。多くの来場客で溢れている=2015年10月、那覇市の奥武山公園

 経済振興における選挙公約で第一次産業重視や地場産業の振興を掲げ、県議会議長時代から「生産の基盤と流通機構の整備強化、そして県民自体の生産意欲の高揚、この3つがなければ真の経済振興はあり得ない」と語っていたという平良。それまで観光まつりや商工まつり、芸能祭など各種それぞれで開かれていた催しを有機的に繋ぎ、多くの籬島を抱える亜熱帯地域沖縄の特色ある県産品が一堂に会す「沖縄の産業まつり」を着想する。

 就任直後から準備を進め、本土復帰から5年の節目となる1977年の11月18日から3日間、那覇市の奥武山運動公園を主会場に第1回目を開催。165,000人が会場に足を運び、大盛況となった。自ら「県産品への理解が深まり、産業振興の契機になった。その実績は今後、沖縄なりに生かしていかねばならない。素晴らしい成果を生んでいる」と開催の意義を高く評価した。

 沖縄の産業まつりは今年で第46回を迎える。コロナ禍に入る前の2019年の第43回では490もの企業、団体が参加し、3日間で287,900人(主催者発表)を集めるまでの県下最大級イベントに成長した。

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