【本部町長選】「観光客を呼び込める町に」新人の真部氏 16年ぶりに選挙戦へ

 
自身の政策を語る真部卓也氏=8月22日、本部町並里の後援会事務所

  任期満了に伴い9月11日に投開票される本部町長選挙(9月6日告示)が、2006年以来、16年ぶりに選挙戦となる見通しだ。現職で2期目を目指す平良武康氏(72)と、新人で町議の真部卓也氏(41)が既に出馬表明と政策発表を終えた。コロナ禍に入る前は年間で300万人以上が訪れていた美ら海水族館を抱えるだけに、アフターコロナにおける町の観光発展などに向けた政策論争が注目される。政策発表の取材やインタビューを通し、両候補の政策を紹介する。

 今回は保守系の立場で立候補を予定する真部氏の政策を紹介する。8月22日に町並里の後援会事務所で政策発表を行った真部氏は、現町政について「本部がどのような町に発展していくのか、全く展望が描けなくなっています。現町長は国に足を運び、新しい財源を確保しに行くことがない。そういうことでは本部の発展は絶対にないと思います」と強い危機感を口にした。

 選挙戦に向け、「NEXTもとぶ」を合言葉に「この緑、山、海に囲まれた本部町を多くの観光客を呼び込める街にし、発展に努めたいと思います」と意気込みを語った。

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中心地の「素通り」脱却へ

美ら海水族館の目玉の一つであるジンベイザメ

 南部から来ると町の”奥”に当たる北西には、2018年度に年間で371万人が訪れた美ら海水族館があるが、真部氏は「多くの観光客は町内の中心市街地に立ち寄ることなく、素通りして水族館に直行してしまっている」と課題を挙げる。

 「町には美味しい店や自然などポテンシャルは十分にある」とし、観光客を誘因する施策として町営市場や周辺の再開発、ワーケーション施設の整備、ホテルの誘致、今年から運行が始まっている那覇市と本部町を結ぶ高速船に対応した渡久地港へのコミュニティバス、レンタカーの導入などを掲げた。また、2025年前後の開業を目指し、名護市と今帰仁村にまたがる地域で建設計画が進む新テーマパーク事業にも触れ「連動しながら動いていくと思います。そのためにも、町内で人が集まるスポット作りに取り組んでいきたいです」と力を込めた。

 また、外国人のクルーズ船客の増加に向けた拠点に位置付ける本部港については、災害時の物流拠点としての活用も見込む。「瀬底島に囲まれ、災害にも強い港だと思いますので、災害時に沖縄本島や籬島、奄美などに支援物資を運ぶ港を目指していきたいです」と将来像を語った。

人口減に歯止め 1期で2千人増が目標

 人口減少についても「歯止めが掛かっていません。生産年齢人口(15~64歳)がどんどん減り、町出身の人が仕事を退職した後に地元に戻ってくるという負のスパイラルが起きている状況があります」と町政における重要課題の一つに挙げる。

 町のホームページによると、今年6月30日時点の人口は13,031人。真部氏はホテル誘致や新たな産業の振興を通して雇用を創出し、生産年齢人口の定着を目指すとした上で「1期目で15,000人。さらに長期的には30,000人くらいまでを目指したいと思います」と展望した。

准看護師の経験生かし「医療行政」に力

 2017年に町議に初当選する前までは准看護師として働いていた経験も活かし、「医療行政に力を入れたい」と意気込む。公共施設のバリアフリー化やコミュニティバスの運行、新型コロナのワクチン接種の加速化、検査費用の軽減などを政策に列挙した。

 福祉政策は保育士や看護師の処遇改善を推進するとしたほか、町がふるさと納税を財源に今年から開始した学校給食費の無償化について「もちろん継続していきますが、ふるさと納税は不安定な財源です。町の予算をしっかりと見直すことで、新たな財源は確保できると考えています」と財源の変更を見据えた。

 その他、昨年11月に実施予定だったが、市民団体の抗議などで中止となった八重岳における自衛隊の演習については「町民に害がなければしっかり受け入れるべきだと思います。台湾有事の危険性も考えると今後も協力要請はあると思いますので、演習内容をしっかりと確認して判断していきたいです」と語った。

真部卓也(まぶ・たくや)

1981年2月20日、本部町渡久地出身。名護商業高校、愛知県・刈谷准看護高等専修学校卒。2004~17年に北山病院で准看護師として勤務。17年の町議選で初当選し、現在2期目。


長嶺 真輝

投稿者記事一覧

ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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