星のや竹富島が島と模索する持続可能な観光 10周年島民ツアーレポ

 
左から竹富財団理事長の上勢頭篤さん、星のや竹富島総支配人片岡順平さん、畑プロジェクトで作物の栽培方法を教えた前本隆一さん

 島民と星のやの関係性からは、その土地に根ざして長く在り続ける持続可能な観光の1つの姿が浮かび上がってくる。片岡総支配人は10周年への思いをこう話す。

「開業のときから、島の方と一緒にはたを織ったり、手仕事を教えに来ていただくといったアクティビティをお客様へ提供しています。島外から来たスタッフが多く、島を遊び尽くそう、とよく皆で話しているんです。私たちが島を好きになって、好きなところをお客様にご案内していきたいです」

 全国に展開するグループ企業ならではの強みもある。

「星野リゾートは長野県の軽井沢で始まりました。土地の自然を資産として生かしながら、環境負荷を与えずにリゾート運営する方法を長年模索しています。この蓄積があったからこそ、竹富島に淡水化装置が生まれたのだと思います。私たちの知見や大切にしている文化を島の価値観と照らし合わせ、未来へ向けて、さらに何か面白いことできないかなと考えていきたいです」(片岡総支配人)

小さな島にとっての持続可能な観光とは

 この日参加していた上勢頭さんは竹富島出身で、島で一番始めにできた民宿「泉屋」の先代主人でもある。コロナ禍になる前は、島に年間50万人の観光客が訪れていた。島の観光について、どう考えているのだろうか。

「コロナの影響でお客さんがだいぶ減ったけど、また戻りつつある。でも、以前みたいな素通りの観光だけで良いのかと考えています。昔は、離島4島巡り、5島、8島、10島巡りなんていうツアーもあった。竹富島にいるお客さんが『ここは宮古島だったか?』と言っていたともありました」(上勢頭さん)

 2021年に、竹富島財団と星のや竹富島はパートナーシップを結んだ。『まいふなーツアー』(まいふなーは、島の言葉で「お利口さん」の意味)と題し、ビーチクリーンをしながら島の文化や歴史を伝えるツアーを実施している。参加者からの評判は良く、修学旅行生などからの需要もある。ところが、人材不足が課題だ。

「それぞれが自分の仕事を持っているから、なかなかツアーにまで人手が周りません。少しずつ解決して、竹富島に来て良かったと思ってもらえるような心に残る観光にしたいですね」(上勢頭さん)

 竹富島の集落には、「グック」と呼ばれる琉球石灰岩を積み上げた塀が道の左右に連なる。星のや竹富島が開業するときには、島の集落と同じく職人の手により1つずつ積み上げてグックを作った。

「オープンしたばかりの頃はグックが白かったけど、10年経って黒っぽくなってきました。緑も大きく育った。50年前に沖縄が復帰したとき、竹富島の集落の道は車が通れるようにと広げたんです。だから、星のやのくねくねした細い道を見ると昔の島を思い出すよ」

 上勢頭さんは目を細めながら語った。島民も星のやのスタッフも、竹富島の文化や環境を大切に思っていることが伝わってくる。竹富島に限らず、その土地にしかない歴史や文化、自然は観光の大きな魅力となる。これから10年での変化もまた、楽しみに見守りたい。

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