「医食同源」の実践を! 見直されるフーチバの力

 

 フーチバといえば、県民の食生活と切っても切れない。そばの薬味や山羊汁の臭い消しに使われ、細く刻んでジューシーに入れても良し。天ぷらにしても美味しい。

 フーチバは、県外のヨモギとは違う。苦味が柔らかく繊維も多いニシヨモギという種類だ。「フーチ」は病気を治す、「バー」は葉を意味するように、沖縄では古くから薬草として親しまれ、ビタミンAやカルシウム、カリウム、鉄分を多く含むだけでなく、抗酸化作用や血圧を下げる効果もあるという。

 日頃からバランスの取れた食事を摂ることで病気を予防しようという「医食同源」の考え方が根づく沖縄では、古くから日常的に食べられてきた。

 そのフーチバを手軽に食事に取り込むことができるのが、長寿の力合同会社の「琉球フーチバ」だ。フーチバの葉と茎をまるごと粉末にしたことで料理に振りかけることができ、水や牛乳などに混ぜて飲むこともできる。

 いつでも思いついた時に食事にふりかけることができるよう、卓上に置くのに便利な小型の瓶に入っている。

収穫を間近にした宜野座村の畑のフーチバ

 フーチバは宜野座村の直営の畑で採れたものを使う。春先の2月や3月に畑に植えつけると、7月下旬には収穫できるようになる。生命力にあふれるフーチバは気候の変化などにも強く、他の雑草に負けることもない。スプリンクラーでの水撒きは必要だが、他には栽培にほとんど手間がかからない。

 収穫すると、それを工場で洗浄してから乾燥させ、衛生のための菌検査を施してから粉末にしていく。

 繊維が多いフーチバを粉末にするのは技術的に難しいとみられていた。繊維が絡まって機械が故障してしまうなどのトラブルが起きやすいからだ。だが、糸満市内の業者の協力を得て粉末化できるようになった。

 代表取締役の伊藝美智子さんはフーチバに着目した理由をこう語る。

 「私の父は役所勤務をしていて、いつものように飲み会がありました。でも、飲んで帰ってくると、翌朝には庭先に生えているフーチバを煎じて欠かさず飲んでいました。母もフーチバを大切にして、家族の誰かが怪我をしたり、おできができたりすると、揉んで塗ってくれていました。私の家族はフーチバで医食同源の考え方を守っていたわけです」

 亡くなった母が遺した日記を読むと、飲み会帰りのお父さんにフーチバを飲ませた、おできにフーチバを塗ったということがたくさん書かれていて、家族思いの母がいかに家族の健康管理にフル活用していたか知ったという。母が大切にしてきた沖縄の習慣をさらに次の世代に引き継ぎたいと商品化を思いついた。

 琉球フーチバーの粉末の入った瓶には「ハルちゃんの想い出」とのコピーがある。ハルちゃんとは伊藝代表の母親のことだ。よく畑で農作業を手伝っていると、作業の合間にハーモニカを吹いてくれた母への想いを込めた言葉でもある。

 フーチバーの粉末に、八重山で食されてきた胡椒のピパーツと塩を加えた「琉球フーチバ×ピパーツ」という商品や、モズクのエキスであるフコイダンなどを加えて錠剤にした「長(ちょう)元気」、「ひびげんき」などの商品もある。フコイダンは免疫力を強化する作用があると言われており、フーチバとコラボさせるに当たっては、琉球大学の専門家からもアドバイスをもらった。錠剤は小粒なので、飲みやすい。

 現在はスーパーなどに出荷しているが、「医食同源」の言葉の発祥地であり、食生活を豊かにすることに世界中のどこよりも関心が高い中国の業者からもこれらの商品に引き合いがあるという。

 伊藝代表はさらなる商品展開としてフーチバの粉末を混ぜたアイスクリームの開発を考え、イタリアから機械を購入したが、機械の洗浄に手間がかかるためこちらは断念。いまはフーチバやフコイダンを使った入浴剤を新たな商品とすることを検討中だ。

 かつて長寿日本一と言われた沖縄県は、食生活の急激な変化に伴って生活習慣病にかかる人が増えており、今や65歳未満の働き盛りの世代の死亡率は全国ワースト。なかでも高血圧に関連する疾患が最も多いという。古くから沖縄の「医食同源」を支えてきたフーチバが見直されてもいいのではないか。

 問い合わせ先:
 長寿の力合同会社
 michiigeiiwa1199@gmail.com


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