台湾有事で想定される避難者 仲井眞元知事「沖縄県は対応を研究すべき」

 
台北の街並み(台湾観光局HPより)

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いている。首都キエフへのミサイル攻撃などロシア軍による攻撃が激しさを増すにつれて犠牲者の数も増えるばかりだ。市民らは戦地と化したウクライナから隣国のポーランドなどへ鉄道やバス、自家用車などでそれぞれが懸命に避難している。その数はすでに320万人を超えたという。戦況次第で今後さらに増えることも予想される。

 避難者には各国から義援金や支援物資が寄せられているというが、短期的には食料や住居の確保、戦争が長引くようであれば、仕事や教育の機会の確保なども考えなくてはならない。新型コロナの感染が続く状況のなかだけに十分な医療の提供も欠かせない。

 沖縄にとってこの避難者への支援の問題は決して他人事ではない。万が一、「台湾有事」ともなれば、台湾からの多くの人々が沖縄へと避難してくることも十分に考えられるからだ。「あらゆる事態を想定して沖縄県も十分に研究をしておくべきです」。そう指摘するのは元県知事の仲井眞弘多氏だ。

島の人口を超える避難民が来ることも

 昨年3月に米国のインド太平洋軍の司令官が上院軍事委員会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。米軍がどのような根拠に基づいてそう考えるのか不明だが、ロシアによるウクライナ侵攻も「まさかそこまですることはないだろう」と思われていたのに現実に起きてしまった。そんな想定をしたくもないが、常に最悪の事態を想定するのが危機管理だ。

 仮に中国による軍事侵攻ともなれば、まずミサイル攻撃を行い、次に制空権を確保するのがセオリーである。そうなれば、民間機の離着陸はできなくなる。島国である台湾から市民が国外に避難しようと思えば、相手国である中国を除けば最も近い沖縄に船で逃げる可能性が高いと考えるのが自然だ。

「沖縄では石垣島や本島などに台湾系の華僑も多く、旅行で来たことがあるという台湾人も多くいます。ましてや米軍や自衛隊もいますからね。中国も迂闊に手が出せないと考えて避難先に選ぶことも十分にあり得ますよ。台湾から一番近い与那国島に島の人口をはるかに超える避難民が来るということも想定しておかないと」(仲井眞氏)

与那国島祖内集落

 与那国島は台湾まで110キロの距離にある。年に数回、天気の良い日には台湾の山並みが見えるほど近い。島の人口は2000人に満たず、警察の駐在所が2つで警察官は1人ずつ。陸上自衛隊の沿岸監視隊の駐屯地があり、およそ160人が配置されている。役場の職員の数は100人に満たない。

 かたや台湾の人口は2300万人を超える。仮に人口の1%が国外への避難を考えたとしても、23万人にも上る。数万人規模で与那国島に避難してきた場合に十分な対応ができるのだろうか。一時的に収容する施設はどうするのか、食事の提供はどうするのか。

 「自然災害を想定して乾パンなどの食糧の備蓄は県内の各自治体も進めているでしょうが、人口をはるかに上回る避難民が来るともなれば、全く足らないということになるでしょう」(同前)

 避難してくる過程で怪我を負う人もいるかも知れない。島には診療所が一つあるだけで、医師1人と看護師2人しかいない。与那国島からさらに石垣島まで行けば、県立八重山病院があり十分な医療を受けることもできる。だが、台湾有事ともなれば与那国空港から民間機の離着陸ができなくなる可能性も考えられる。

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