通報者語る「低い、危ない」MESHヘリ墜落 沖縄離島医療支え

 

変わりやすい風向き 続く原因究明

 機体は何らかのトラブルで高度を保てなくなったと見られるが、与那嶺さんによると飛行音はいつもと変わらず、異常は感じなかったという。ただ島内は「よく風向きが変わる」と言い、操縦の難しさもあるのではと推測する。

 事故発生時、現場から西に3、4キロ離れた場所で農作業をしていた別の男性(57)は「あの時、風向きが変わった」と振り返る。「東からの風が北風に変わり、風も強くなって『肌寒いな』と思ったからよく覚えてる。直後に警察のヘリが上空でホバリングし始めて、ネットニュースで事故を知って驚いた。風の影響かもしれない」と語った。

 運輸安全委員会は15日に現地調査を終えた。今後機体の整備記録や乗員の健康状態なども調べ、事故原因について報告書をまとめるという。

現地調査を行う作業員=15日、伊江村

理事長「痛恨の情にたえない」

 メッシュ飛行機は急患搬送、病院からの帰島搬送、医師派遣を担い、北は奄美大島、南は与那国島まで半径700キロの範囲をカバーしてきた。運用を始めた2015年度の活動実績は4件のみだったが、徐々に増え、20年度は149件、21年度は今月13日時点で142件に上った。

 北部12市町村で組織する北部広域市町村圏事務組合から事業を受託し、本島北部地域の救急救助ヘリも半径50キロの範囲で運用する。

 メッシュの塚本裕樹理事長は亡くなった2人の乗員について、ホームページやSNSで「離島医療のために貢献できればと高い志のもと、当法人の活動にご志願いただいていたため、痛恨の情にたえません」とコメント。現在、飛行機、ヘリともに運航を自粛している。

島民の命綱 

 痛ましい事故を受け、島民からは悲痛な声が漏れる。

 5年ほど前、当時90歳近かった母が脳溢血(のういっけつ)で倒れ、メッシュのヘリで名護市の病院まで搬送されて一命を取り留めたという農業従事者の男性(70)は「自分も付き添ったけど、乗ってから10分ちょっとで着いた。母親も今も元気」と言う。メッシュの存在が島民の命綱になっていることを実感しているからこそ「乗員が亡くなってしまったのは本当に残念」と肩を落とす。

 ヘリの運用が休止している間、北部地域は県のドクターヘリや自衛隊ヘリなどで対応するという。ただ県のドクターヘリは1機のみで、浦添市が拠点。メッシュに比べて現地到着までの時間は長い。事故現場付近の葉タバコ農家でアルバイトをする男性(23)は「村内には高齢者も多い。メッシュが再開しないと、島の医療が大変になってしまう」と心配した。

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