やんばるラブストーリーは突然に 沖縄北部にある恋愛スポット

 
今でも源河沖に確認できる岩島

極限の状況で愛に気付く

 名護市の南端部である許田に対し、最北端の源河にも古いラブストーリーが残されている。沖縄芝居でも長く人気を集める演目『夫振岩(ウトゥフイジー)』だ。

 その昔、琉球国北部の豪農「源河ウェーキ」にとびきり美人の娘がいた。家柄も良く容姿端麗、持ち込まれる縁談話はあとを絶たなかったという。

 しかし娘の両親は将来を案じ、村一番の働き者である男に娘を嫁がせることにした。この男は真面目でよく働いたが、容姿は醜く小太りで頭も薄かったという。

 そうなると娘は全然面白くない。無理やり結婚させられた上に相手は全く自分好みでもない。毎日ケンカばかりの生活が続いた。

 さすがにそれを見兼ねた双方の両親はある作戦を企て、船遊びと称し二人を沖の岩島まで連れ出した。島に着き二人を下ろした途端、船は一気に浜へと引き返す。二人を小さな岩島に置き去りにしたのだ。

 最初はわめき散らし罵り合う二人だったが、どうすることもできない。日が暮れるにつれて波風は強まり寒さが増してくる。あまりの寒さに震え泣き出す妻を案じて、ついに男は自分が着ていた上着を被せてあげたのだった。

 その愛情に深く感動した妻は、これまでの自分の態度を悔い改め泣いて詫びた。すると男も自分のこれまでの非を詫び、二人抱き合って一夜を過ごしたという。翌朝両親たちが岩に戻ってくると、そこには仲睦まじく体を寄せ合う二人の姿があった。

 それからは一転、村一番のおしどり夫婦として村中から羨ましがられる夫婦になったという。この一件から、横柄に夫を振り回すような妻にはならぬようにとの教訓の意を込め岩島に「夫振岩」と名付けたようだ。

 源河の沖には今でも岩島がポツンと浮かんでいるので、ぜひパートナーと一緒に見つけてみてほしい。

 また源河の高台には屋敷跡も残っており、そこから見渡せる一帯全てが源河ウェーキの敷地だったという。高台からの景色も絶景だ。家屋自体は残っていないが、石垣やフール(沖縄の昔の便所)は綺麗に残されており昔の琉球屋敷を感じるには十分だ。

「源河ウェーキ」の屋敷跡

 近年は長引くコロナ禍でストレスが溜まり、家庭内やパートナーとの雰囲気が悪くなってしまったり、人との出会いもめっきり減ってしまい孤独を感じたりする状況にある。

 しかし決して自分だけのことではないので、客観的に世間を見つめてみる目線を持ち、こんな時期だからこそ普段触れることのない先人たちの恋愛エピソードに触れてみるのはいかがだろう。

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