「ツチトイブキ」がワインで沖縄飲食シーンに広げる美味しさの波紋

 
ワインショップ「ツチトイブキ」のソムリエ2人。店主の竹内佐織さん(右)と伊波史人さん(左)

 まだ陽が明るい、とある休日の午後。屋外に置かれたテーブルと店内カウンターの席は埋まり、目を引く絵柄のエチケット(ラベル)のボトルを手にした店員が忙しく動き回り、客と楽しげに話しながらグラスにワインを注いでいる。賑やかな笑い声が響き渡る通りは一瞬ヨーロッパかな、と錯覚を覚えてしまう光景だが、場所は那覇市松尾の浮島通りだ。

 ナチュラルワイン(※自然派ワイン)を中心に400種類以上のワインを取り揃えるワインショップ「ツチトイブキ」。2020年10月にオープンしたこの店が今、沖縄の飲食シーンで決して小さくはない“ムーブメント”を起こし始めている。

可愛い絵柄や色彩豊かな目を引くエチケットがズラリ。見ているだけでも楽しい

(※自然派ワイン、ナチュラルワインには様々な規定やジャンルがあり、細かく定義するのは困難で確たる定義も今のところ無いのが現状だ。『自然派ワイン入門』(エクスナレッジ)によると、ナチュラルワインとは「少なくともオーガニックの基準を守った畑で栽培されたブドウを、添加物を加えたり成分を除去したりすることなく発酵させて造ったワインで、瓶詰めのときに亜硫酸塩を少量加えることだけが認められている、古きよき『発酵したブドウジュース』としてのワインの原義に最も近いもの」)

自然派ワイン取り扱い店舗が一気に増加

何となく“オシャレ”ということではなくて、自分が良いと思った『飲めば純粋に美味しいワイン』をセレクトしています」とこだわりを語る店主でソムリエの竹内佐織さんは、ワインの話を始めるといつまでも喋り続けてとどまるところを知らない。

 「1」聞けばおそらく「15」くらいの答えが返ってくるその熱量と天真爛漫さは、ツチトイブキが肩肘張らずに心地よくワインを楽しめる空間になっていることの大きな要因だろう。

 ワインの販売に加えて、酒屋で立ち飲みできる「角打ち」営業を行なっている。フランクにたくさんの種類の美味しいワインを飲めるため、あまり詳しくなくても「ワインってこんなに美味しかったんだ」とシンプルに感動して“ハマる”人たちが急増したという。竹内さんは「ワインが日常的なものになって、生活に浸透し始めているという実感があります」と話す。

 そして一般客だけではなく、飲食店関係者もハマっている人たちの中に含まれているところが沖縄の飲食シーンに影響を与えている所以だ。

常連客の好みを聞きながらワインをセレクトする竹内さん。話し出したら止まらない

「3年前に沖縄に来た時から、ナチュラルワインを飲める飲食店の数を増やしたいという思いはありました。そんな中で、特に営業をかけたわけでもないんですが、ワインを飲んで気に入ってくれた飲食関係の人たちからの問い合わせがどんどん増えているんです」(竹内さん)

 現在ツチトイブキの取引先は60〜70店舗。実際に店舗が所在する浮島通り付近の居酒屋や焼き鳥屋などでも、この2年足らずでナチュラルワインを気軽に飲める店が一気に増えた。「取引先の飲食店の方たちがお客様に飲んでもらってワインを好きになってくれているという面も大きいと思います」

Print Friendly, PDF & Email
次ページ:

1

2

関連記事

おすすめ記事

  1.  サッカーJ3のFC琉球が、第2次金鍾成(キン・ジョンソン)監督体制下の初陣を白星で飾った…
  2. 今季から琉球ゴールデンキングスに加入したアレックス・カーク(左から2人目)やヴィック・ローら=16…
  3.  FC琉球の監督が、また代わった。  サッカーJ3で20チーム中18位に沈む琉球は1…
  4. 戦前に首里城正殿前に設置されていたバスケットボールゴールを再現した首里高校の生徒ら=8月27日、那…
  5.  8月12日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール市民交流室は熱気が渦巻いていた。ステー…
宮古毎日新聞

特集記事

  1. 再びFC琉球の指揮を執ることになり、トレーニング中に選手たちに指示を送る金鍾成監督=19日、東風平…
  2. ヴィック・ロー(中央)の入団会見で記念撮影に応じる琉球ゴールデンキングスの(左から)安永淳一GM、…
  3. 沖縄県庁  沖縄県は、地域の緊張を和らげようと、4月から「地域外交室」を設置し、照屋義実副知…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ