- Home
- 暮らし・教育・子育て
- 地域に根付いた「流通していないイモ」食育がつなぐ年の差90歳
地域に根付いた「流通していないイモ」食育がつなぐ年の差90歳
- 2022/1/27
- 暮らし・教育・子育て
食育から学べること
清水さんは今回、宮城さんの甘藷以外にも、紅芋や備瀬芋など様々な種類の甘藷を育てた。これには「1つ1つを見ることで、芋の違いを見てもらいたかった」という狙いがあった。
同じ芋であっても、葉の色や育った見た目も様々。しかし同じ土地に育ち、収穫し食べてみるとどれも美味しいことから、多様性を食物から感じてもらった。
「いろんな色があって、いろんな特性がある。あなた達も同じだよね」。そう子どもたちに伝えた。
清水さんの食育との出逢い
清水さんが初めて畑に触れたのは、埼玉で保育士として初めて5歳児を受け持つことになった時だ。5歳児クラスでは食育のため畑で作物を育てる学びがある。その地域では農業が盛んで、同じ保育園に勤める保育士のほとんどが農家の妻だった。そんな保育士の先輩から「まずは花壇で大豆を育てること」を教えてもらった。先に大豆を育てることで良い土壌ができるという。その土壌で育てた野菜は面白いほどに良くできた。
最初に育てた大豆は収穫後、炒って2月の節分に撒く豆にすることも教えてもらった。大豆が節分に使われ、福を取り込み邪気を逃がすという意味で、「育てたものが自分たちを清めるものにもなる」と清水さんは振り返る。
その他にも、米の稲藁は正月のしめ飾りになり、作物を育てることで年中行事の意味も知っていった。
子ども達と何気なく行ってきた季節ごとの行事は、ほとんどが食に繋がることをそのとき学んだ。
沖縄に移住後、畑を借りて作業を行う中で有機栽培を行う農家さんと繋がった。化学肥料や農薬を使わない農業が陸を豊かに変え、それは海の豊かさに繋がることを教えてもらった。このことをより多くの人に伝えないのかと聞くと「私は育てるのが専門で、伝えることはできない」と言われた。その言葉に清水さんは「じゃあ自分が伝えよう」と食育アドバイザーの資格を取り、子ども達に食の大切さを伝える活動を行うようになった。
食育の大切さを繋いでいく
清水さんは2019年にも同こども園で、衣装ケースを使った稲作を行なった。稲が育つ過程の中で、害虫を食べてくれる昆虫がいたり、その昆虫を食べるカエルがいたり、そのカエルを狙う鳥がいたり、田んぼの周りで起きる食物連鎖を子どもたちと窓から覗いた。
「いらない命は1つもない。植物を見ていれば全てを教えられる」
子どもたちに教えられることは、多様性や食物連鎖だけではない。受粉や果実が実をつけるなど植物が繁殖していく過程から、命や性の大切さを教えることができ、水をあげ育てていくことで相手を思いやる気持ちなど、さまざまなことを育むことができる。
子ども達はもちろん、同じ保育士にも食育の大切さに気づいてもらい、さらに多くの子ども達に自分たちで食物を育てる術を学べる機会を増やしてほしいと、清水さんは感じている。