岸田政権誕生へ 沖縄政策はどう変わるのか
- 2021/10/3
- 政治
自民党が下野していた12年には、党内に沖縄振興を推進する「美ら島議員連盟」が発足し、岸田氏がその初代会長に就任。同年12月の第2次安倍政権以降は約4年7カ月、外相として安全保障の面から沖縄に関わり、環境と軍属についての日米地位協定の環境補足協定締結に取り組んだ。20年9月には美ら島議連の会長に再任され、現在に至る。
「話をよく聞く姿勢に徹し、物事をソフトに進める政治家」という評価は、沖縄・北方担当相時代から県内政界関係者の間でも共有されている。
路線継承か独自カラーか
周囲の話に耳を傾ける「聞く力」をアピールし、新総裁の座を射止めた岸田氏。玉城デニー知事は岸田氏の総裁就任を受けて「ぜひ対話をしていただきたい」と述べ、基地問題解決への期待を込めた。
「対話」は岸田氏、玉城氏の政治姿勢を示す共通のキーワードだが、こと辺野古の基地問題では大きくすれ違う。岸田氏は総裁選中の琉球新報のアンケートに「別案はない」と回答。安倍-菅政権の方針を継承する考えを示している。
一方、沖縄振興策をめぐっては、懸案となっている沖縄振興開発金融公庫の存廃に関して沖縄タイムスのアンケートで「必ず存続させるつもりだ」と断言した。沖縄振興についても、これまでの路線踏襲の方針は色濃くにじむ。
県内経済界には、改革の実行力や突破力を持ち味とする河野氏が新総裁となることで、沖縄振興開発金融公庫や公共事業の高率補助が廃止となる可能性への懸念もくすぶっていた。それだけに「バランスという意味で、(岸田氏は)4氏の中で一番の候補だった。新型コロナウイルス対策を進めて、沖縄振興の継続に取り組んでもらいたい」と受け止める関係者もいる。
安倍-菅政権では、政府と沖縄の関係性を計るバロメーターとされたのが沖縄振興予算だった。22年度概算要求は2998億円となり、10年ぶりに3千億円台を割った。岸田政権が沖縄に対していかなる独自カラーを打ち出すのかは、11月の衆院選を経て年末に決定される22年度沖縄振興予算案が一つの判断材料になる。
下地氏の自民復党問題への影響は
衆議院選挙の沖縄1区でこれまで自民党の國場幸之助議員や共産党の赤嶺政賢議員と争ってきた下地幹郎議員が、今秋の衆院選を前に自民党への復党を求めている問題では、岸田政権の誕生で下地氏が厳しい立場に置かれることも予想される。國場氏が自民党の岸田派に所属していることから、新しい自民党の執行部が下地氏側の求めに易々と応じるとは考えにくいためだ。
すでに下地氏は復党が認められずとも衆院選に立候補することを表明しているが、来月上旬にも予想される衆議院の解散までにこの問題がどのように決着するのか注目される。