初恋クロマニヨン 「ネタは生命線」 沖縄賞レース覇者の緻密な戦略

 

お笑いバイアスロンは挫折でもあった

 大会が立ち上がった2013年の第1回以降、【6位→5位→4位→3位→2位→5位→1位→2位→1位】と、初恋クロマニヨンは9年連続で決勝に進出している。近年は上位常連のトリオだが、当初は結果を残すことが出来なかった。

 比嘉は「第1回から優勝だと信じてたんですけどね。初回は審査員から『キャラに頼りすぎ』と言われ、そこを意識して挑んだ翌年は『元気がない』と言われて。とにかく翻弄されました」とこれまでを語る。

 その一方で新本奨は「そこだけを気にしすぎないようにはしました」と振り返るなど、らしくいることにも努めた。

「第1回・第2回と優勝争いに絡めなかった時は、頭打ちに感じてお笑いを辞めようという話にまでなりました。その時にお笑いを続けるための条件として『とにかくネタを量産しよう』と」(松田)

 試行錯誤の末、手応えを感じられる自分たちのスタイルを築き上げた。
「コントの作り方を、設定先行からキャラ先行に変えました。とにかく登場人物の発する言葉や動きに必然性があるようにする。そいつがただ叫ぶだけじゃなく、叫ばざるを得ない動機を作る。心の機微を意識して作り出しました」(松田)

「だんだんと結果も付いてきて、僕らと大会が馴染んでいく感じはしていました」(比嘉)

 ネタをチューンアップした結果、2019年には初の優勝を飾った。松田は柄にもなくテレビカメラの前で涙を見せた。新本と比嘉も報われたような安堵の表情を浮かべた。

「生命線」と語る緻密なネタ

 3人は今でも、ほぼ毎日のようにネタ合わせをするという。コロナ禍で舞台の数は減ってしまったが、相変わらずネタに向き合ってきた。

 松田は「間違いなく僕らの稽古量は沖縄で一番だと思います。ネタは『生命線』だと思っていますから」と自信を覗かせる。

 ネタの精度だけではなく、舞台に出る直前まで嗅覚鋭く微調整を続ける。
「当日の傾向を見て、舞台袖まで作戦練っていますよ。バイアスロン当日はこれまでの流れから力技が有効だと見て、1本目から‘演じる側の楽しい雰囲気と圧力を出していこう’と」(松田)

 同じネタでも、フレーズを立てる、フリに強弱を付ける、言葉尻をかぶせるタイミングなど、生モノのように変化させるという。そんな隠し味のようなことまでやっているのかと問いかけると、松田はさらにこう言い切った。

「ある一定レベルの人たちは絶対にやっています。沖縄でそれをやってるのは数えるくらいしかいない。ただ演るだけでは意味がなくて、お客さんの空気を掴むためにギリギリまで突き詰めています」

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