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【教員免許更新制度廃止へ①】なぜ、更新制は失敗してしまったのか?
- 2021/9/7
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教員免許に10年の“有効期限”を設け、更新しなければ失効してしまうという教員免許更新制度(以下、「免許更新制」)。教員の資質・能力の向上を目的に平成21年4月からスタートしましたが、これまで多くの問題点が指摘されており、ついに8月23日、中央教育審議会(文部科学省に置かれる諮問機関。以下「中教審」)の下に設置された検討会議において、この制度を「発展的に解消」する方針が正式に示されました。
沖縄では、精神疾患による休職教員の割合が全国上位、あるいはわいせつ行為などの不適格教員の懲戒処分も毎年のように発生し、沖縄の教員を取り巻く環境は深刻な状況です。教員の資質向上として沖縄の教員にとっても重要な制度であるはずの免許更新制は、なぜ、失敗してしまったのでしょうか。そして、教員の資質向上の議論は、今後どのような方向に進んでいくのでしょうか。免許更新制の廃止に迫る3回シリーズの第1回目です。
免許更新制の誕生
幼稚園、小学校、中学校、高校の教員免許。大学などで取得した免許は、10年後に、30時間以上の必要な研修を受けて“免許を更新”しなければ、自動的に失効してしまいます。教員免許制度そのものは、戦後の学校教育制度の柱のひとつとして、昭和24年には制度化されていますが、当初は免許を更新するという仕組みはなく、免許更新制が導入される平成21年までは、一度与えられたら終身有効な資格として扱われてきました。
実は、免許更新制のアイデアは昭和の時代からあったものの、政府で本格的に議論されるようになったのは、平成12年、森内閣の下に置かれた教育改革国民会議による提言が最初。ここから、一度は文部科学省が導入を否定するものの、後に方針転換するなどの紆余曲折を経て、第一次安倍内閣の下、平成18年の中教審答申や平成19年の教育再生会議による提言によって更新制導入の方針が決定されました。翌平成19年には関連法令が国会で可決・成立し、平成21年4月から本格的に制度がスタートすることとなったのです。
免許更新制が目指した理念
平成18年、当時の中教審答申では、制度創設の目的として、「教師として必要な資質能力が時代の進展に応じて常に変化し続ける中で、その時々で教師として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、公教育の充実を図るとともに、教師が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すもの」と表現しました。
つまり、時代の変化に合わせて教員の知識技能もアップデートする。そのため、すべての免許取得者に、10年ごとに更新講習を受けさせるということです。教員免許に有効期限を設け、講習受講を義務付けることにより、教員の資質向上の機会を制度的に担保したわけです。
乗り越えられなかった挫折
しかし、制度創設時から多くの批判もありました。例えば当時、すでに民間人を校長に登用する事例などもあり、多様なスキルを持つ人材の活用が叫ばれる中、免許更新制はむしろ現職教員でない免許保持者を排除してしまうことにより、多様な人材が現場に集まりにくい負の効果があるという主張です。
さらに、およそ3万円前後の受講費用は、教員免許が「個人の資格である」ことを理由に受講者の個人負担となってしまい、加えて講習時間は30時間以上と定められ、経済的負担と時間的負担という二重苦が教員にのしかかることとなってしまいました。これには現場から非難の声が上がり続けていました。